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第3章 植物群系とその分布

 

 

◆植物群系と環境条件

地球上における森林や草原の分布は,降水量と気温に密接な関

係がある。教科書p.22228をみると大体次のことがいえる。

熱帯多雨林…

年平均気温20℃以上,降水量2000mm以上に発達する森林。常緑樹よりなり,つる植物やシダ植物が繁茂して,密林になる。

雨緑樹林……

年平均気温18℃以上,降水量10002500mmに発達し,乾期には落葉する。季節風林,熱帯季節林ともいわれる。林床にイネ科の草本,つる植物などが繁茂する。

常緑広葉樹林…

年平均気温1220℃,降水量10003200mmに発達する森林。いわゆる照葉樹林である。

落葉広葉樹林…

 

年平均気温314℃,降水量5002800mmに発達する森林。いわゆる夏緑樹林である。

針葉樹林……

年平均気温−165℃,降水量2002000mmに発達する森林。シベリア地方に発達する針葉樹の大森林をタイガという。

原…………

年平均気温−3℃以上,降水量3000mm以上に発達する。特に降水量が比較的多いところに発達する草原がサバンナ(サバナ)で,熱帯あるいは亜熱帯でみられ,イネ科植物がおもで,しばしば低木などの樹木が点在する。サバンナよりも温度が低く,冬季寒冷で,降水量も少ないところに発達するのがステップとよばれる草原である。ステップにも低木がまばらにある。

ツンドラ……

森林限界よりも北にある荒原で,針葉樹は生育できない。コケ類,地衣類がおもである。

砂漠…………

降水量300mm以下(ふつう200mm以下)の亜熱帯および温帯にできる荒原。乾荒原ともいわれ,一般に植物は生育していない。

 

 

A 世界の植物群系

◆世界の植物群系

熱帯多雨林はアマゾン,東南アジア,中部アフリカ,ボルネオ,ニューギニアなど

に発達したものがみられる。面積は970km2。赤道をはさんで,南北それぞれ30°

以内,年降雨量が2000mm以上。林内は80%以上の湿度があり,つる植物や着生植物

が多い。植物の密度も高く,また生産量も大きく,吉良によるとタイの熱帯多雨林で

28.6t/haに達する。

 亜熱帯多雨林は日本では南西諸島,九州南端,小笠原などにみられる。暖温帯で

1300mm以上の降雨量があるところに発達し,フロリダ南部,ニュージーランド北部,

中国南東部などにみられる,マングローブ,ビロウ,ヒルギ,ヘゴなど。

 照葉樹林は常緑広葉樹林ともいう。暖温帯に発達,クチクラ層の発達した葉を持つ

ものが多い。アジアの東南部,北米フロリダ半島,オーストラリア北部,南アメリカ

中部などにみられる。

 夏緑樹林は落葉広葉樹林ともいう。北アメリカやアジアでは北緯5030°付近に発

達する。夏緑樹は陽樹的性格のものも多く,照葉樹林より,林内が明るく感じること

がある。北海道では海抜0600mぐらいの間に形成される。ブナ,カンパ,カエデの

仲間の混交林であり,中にいくつか針葉樹がみられる。

 サバンナはサバナともいう。乾期,雨期が交代する亜熱帯,熱帯にみられる草原で

ある。一年の間に冠水したり,あるいは砂漠に近い状態であったり,いろいろな条件

で,さらに細かく分類される。図29の写真は乾燥期がある期間はっきり存在する

乾性サバンナのもので,イネ科植物が群生し,その中に落葉樹が散在する。

 砂漠は乾荒原ともいう。熱帯から温帯の大陸内部に発達する。降水量は年に200mm

以下で,地球陸地の25%を占める。植物の生育が悪いため,土壌の形成が進まないう

え,風による砂の移動が激しく,生物の生活を阻害している。ルブアルハリ砂漠はア

ラビア半島南部の砂漠で一部は海岸に接している。広さは50km2で,そのほとんど

は非居住地域である。ヴェトウィンがごく一部に,ラクダなどを放牧し生活している。

 針葉樹林はとくに北半球の大陸の北部によく発達しているが,南半球の大陸にも存

在している。針葉樹の葉は窒素分が少ないので微生物による分解がやや悪く,そのた

め堆積して泥炭層などを形成しやすい。

 ツンドラは寒荒原ともよび,低温のため針葉樹林が発達しない場所にみられる。コ

ケや地衣が主で,その中に一年生草本が混在する。地中は厚い凍土をつくっている。

夏にその表面がとけ,その短い間に草本が成長し花をつけ,結実する。ノルウェーな

どスカンジナビア半島の北半分にはツンドラが発達している。

 

 

B 日本の植物群系

◆日本の森林

日本の森林を区別すると,トカラ列島以南の亜熱帯多雨林帯,関東以南の照葉樹林

(常緑広葉樹林帯),中部地方の高地から東北地方,北海道の西南部までの夏緑樹林帯

(落葉広葉樹林帯),北海道中部以北の常緑針葉樹林帯となる。

 また,高度が上がるにつれて植物分布が異なってくる。植物の垂直分布に最も大き

く影響するのは温度で,だいたい100m高度が上がるにつれ,約0.5℃下がる。本州中

部の太平洋側の高山を例にとると,高度500m700mまでは照葉樹林帯で,これより

上で1,5001,700mまでは夏緑樹林帯である。この地帯の1,200m付近まではクリ,そ

れより上はブナが多いので,それぞれクリ帯とブナ帯に分けることもある。さらに上

2,500m付近までは,シラビソ・コメツガ・トウヒなどの針葉樹林帯である。これよ

り上は森林が成立せず,針葉樹林の上限が森林限界になる。森林限界以上は,ハイマ

ツ群落や高山草原が占めるハイマツ帯である。

 垂直分布は,緯度により変化し,分布の高さは高緯度ほど低くなる。

 

◆暖かさの指数

動物にしても植物にしても,単純な年平均気温よりも生育期間の温度の総和,すな

わち積算温度にその生活が大きくかかわっているとみなされる。たとえば種子が発芽

してから開花・結実するまでの期間について,その積算温度を求めると種によって一

定の値がみられる。A種が生活するためには少なくとも積算温度としてθが必要だと

すれば,A種の生育しようとする地域の積算温度が少なくともθ以上でなければ,A

種はその生活環を全うすることができず,したがってそこでの生育は不可能となる。

 この積算温度は,毎日の平均気温を求めて計算せねばならないので,同様の意義を

もつ温度指数を簡易に求める方法を吉良竜夫氏が創案したのが,暖かさの指数と寒さ

の指数である。温帯から亜寒帯の生物の温度限界を表す方法として,これら生物の生

活活動が低温のため停止する限界分布温度の平均(生理的零点)の温度を5℃にとり,月

平均5℃以上の月について,Σ(θ5) (ただしθは,月平均気温)を計算する。これが暖

かさの指数である。

 ところで熱帯・亜熱帯地方の生物の生活にとっては,冬期の寒さが制限要因となる。

したがって,この場合寒さの指数を使うとよいわけで,これは月平均気温θとして,θ

5℃である月について,−Σ(θ5)によって示せばよい。

 温帯地方の山岳では,高くなるにつれてブナのような夏緑樹林からコメツガ・オオ

シラビソのような針葉樹に代わり,2,500mぐらいでこの林も姿を消して高山帯に入る。

この森林がなくなる境を森林限界とよんでいるが,これは主として温度の支配をうけ

る。ケッペンは一年の中で最高の月平均気温が10℃の等温線が森林限界と一致すると

主張したが,これは北半球,とくにヨーロッパではあてはまるが,南半球ではあては

まらないことがわかった。

 そこで,この暖かさの指数を用いると,暖かさの指数15の等指数線が世界各地の森

林限界線と一致する。同様に亜高山帯と山地帯との境界は,暖かさの指数45,ブナの

分布の下限は85の暖かさの指数となる。

 ところで,カシ類の分布の上限または北限の指数を暖かさの指数で求めると,九州

の山では70,中部では100,東北地方では85というように地方によりかなりずれがみ

られる。そこで,カシ類の分布を,寒さの指数で求めてみると,すべて−15で一致し

た値となる。このように対象とする生物の生活形によって,暖かさの指数が合理的な

場合と,寒さの指数のほうが合理的な場合がある。

 

 

 








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