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第2節 植物群落の構造と物質生産

 

 

A 植物の生活形

◆相観

 生物群集の形や構造からみた様相を相観とよぶ。生物群集の形は当然ながら構成す

る生物の形によって大きく支配される。基本的には高さ,木本と草本,樹幹の形とか,

落葉と常緑,着生植物とつる植物などであり,ホイタッカーによると次のように分類

されている。

高木(3m以上) 針葉樹,広葉樹(常緑照葉樹・夏緑樹),とげ植物,ロゼット形植物(

シ・木生),つる植物

低木(3m以下) 広葉樹(常緑照葉樹・夏緑樹),ロゼット低木(アロエ・ユッカ),多肉

茎植物,とげ低木,半低木(生活に不適な時期に茎や枝の上部が枯死する),亜低木(25cm

以下)

着生植物

草本植物 シダ類,イネ科植物(イネ・スゲ),草(草原のほか森林の下草)

葉状植物 地衣類,コケ類

 

 

以上の生活形にあわせ,それら植物の個体密度や被度などが,とくに相観を決定する。

したがって,群落での優占種は,その相観を特徴づけるもっとも大きな要因である。

 

◆植物の生活形

植物の相観や生活形は,動物の生態的同位種と同じように,似たような自然選択が

形態の類似した生物を進化させることを示しており,適応現象の普遍性を明らかにす

る上で重要なテーマである。特に,ラウンケルの生活形は乾燥標本からも判別が容易

で,標本さえあれば,各類型の頻度分布(生活形スペクトル)を地球規模で明らかにする

ことができる。植物の生活形スペクトルは気温や湿度の勾配とよく対応しており,生

息地の環境条件の推定を可能にしてくれる。

 

実験16 方形枠法による植物群落調査

 

B 植物の物質生産

◆植物の生産構造

層別刈取り法(stratified clipping method)は植物群落における光合成系と非光合成系の

空間的配置を調べる方法である。この結果得られる「生産構造図」は,群落を構成す

る各々の植物種の量と空間的配置を示し,種間競争や遷移などの研究に役立つ。

1.生産構造  植物群落の同化系と非同化系の垂直分布と,群落内の相対照度の垂

直分布を生産構造とよぶ。これはこの分布が物質生産と密接な関係があるからである。

また,それを示す図を生産構造図という。生産構造は,草本群落では広葉型とイネ科

型に分けられるが,森林では広葉型に対して広葉樹型が,イネ科型に対して針葉樹型

がそれぞれ対応してみられる。広葉型では葉量分布のモードが比較的上層に,イネ科

型では比較的下層にみられる。

2.層別刈取り法  群落の中で割合に均質なところを一定面積(50×50cmまたは1

×1mのコドラート)をとり,この面積の四隈には高さを目盛ったポールを 垂直に立

てる。刈取りは群落の上の方から一定の厚さ(群落の高さにもよるがふつう10cm,また

20cm)ごとに順次,剪定ばさみを使って行う。この際,四隈のポールの間にタコ糸を

水平に張り,糸の高さを刈取りの高さに合わせ,上より順次下へずらしていくと,き

れいな層別刈取りができる。また刈取りは,できるだけ自然の状態のまま行うよう心

がける。イネ科の植物では斜めになっていた葉が,上部の葉身を切りとると立ち上が

ることがある。この場合には,元の斜めの状態にもどして刈取りを行うようにする。

刈取った植物体は,各層ごとにポリエチレン袋に詰め,実験室に持ち帰る。実験室で

は植物をまず種類別にし(種類が多いときは目的に応じて適当なグループ別にしても

よい),さらにそれぞれを光合成系と非光合成系とに分け,生重量,乾燥重量の測定を

行う。次表は,このようにして得られた結果である。

 

これから生産構造図をつくるには,方眼紙を用い,ふつう中央の縦線を基準とし,こ

れから左側に光合成系(F),右側に非光合成系(C)の重量をとり,各層別に重さをかき入

れる。Cの重量はFに比べて大きいので,Cの目盛をFの半分にしてとることがある。

数種の植物が存在するときは,それぞれを色分けして区別する(下図)

また群落内のいろいろな高さで相対照度を測定し,これを生産構造図にかき入れると,

各層の葉群の光合成による生産力をある程度直観的にみてとることができる。 (岩城

英男)

 

 

 

 森林の構造

◆森林の構造

森林構造の複雑さは緯度勾配を示し,熱帯雨林は寒帯や温帯の森林よりもかなり複

雑である。その理由として,高緯度地域の森林が環境変動による撹乱を何度も受けて

きたことを重視する説があったが,近年,光量と生産力の緯度勾配を主原因とする説

が有力となっている。森林の純生産量は光量の多い低緯度地域ほど大きく,熱帯林で

は高木樹種が成長しやすい。また,これらの高木が倒れることによってできるギャッ

プも大きくなりやすく,3次元的に様々なニッチを提供して多様な樹種の共存を可能に

し,森林構造を複雑にしているという。

 

D 草原と荒原

◆草原と荒原

陸上植物の現存量は地球全体で1837Gt(ギガトン:109t)と見積もられているが,サバ

ンナ,ステップ,ツンドラなどの草地や荒原の植物現存量は79Gtで,全体のわずか

4.3%にすぎない。しかし,年・uあたりの純一次生産力はサバンナで900g,ステッ

プで600gであり,北方針葉樹林の800gとほとんど同じである。また,サバンナとス

テップを合わせた面積は24×106km2であり,熱帯雨林の17×106km2や北方針葉樹林の

12×106km2よりもはるかに広い。さらに,イネ科草本植物は二酸化炭素の肥料効果を

受けやすく,二酸化炭素の吸収源として森林と同じくらい重要である。

 

実験17 土壌動物と環境

 

 水界

◆水界

水中の有機物は粒状有機物と溶存態有機物に分けられるが,溶存態有機物は分解者

によって無機化されることによって植物に利用されると考えられていた。しかし,近

年,バクテリアの研究が進み,溶存態有機物の多くが従属栄養型のバクテリアによっ

て直接摂取され,ベン毛虫や繊毛虫を通じてさらに高次の動物プランクトンに利用さ

れていることが明らかとなってきた。これらの微生物を通じた食物連鎖は微生物ルー

プとよばれ,植物→一次消費者→高次消費者という古典的食物連鎖とともに水界にお

ける物質循環やエネルギー流を支えていると考えられるようになった。

 

 

 








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