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第1節 個体群の成長

 

 

はじめに

◆作用と反作用

 火山の爆発などで生じた岩石には,まず地衣類がはえる。地衣類は酸を出して岩石

の一部を溶かす。岩石が細かくなった荒れ地に草木や木本の植物がはえてくる。こう

して,落ち葉や植物の枯れた部分は,荒れ地に有機物を与え,また根は土壌の粒子を

細かくする。さらに土中の根粒菌,アゾトバクターなどは,空中窒素を固定して有機

物の形にする。一方,ミミズ,線虫などの動物は,有機物を土といっしょに食べ,不

消化物を排出することにより,土壌の粒子を細かくするように働く。

このように,土壌は生物の働きにより変化し,またそれにより有機物や水分を多く

含むようになって,植物の生育を助ける。

 

◆個体群

個体群populationとは同種個体の集団であり,同一個体群内の個体は交配や個体間相

互作用を通じて密接な関係にあり,同じ種であっても異なる個体群とはやや隔離され

た地域集団と定義される。集団遺伝学では個体群を進化の単位とするため,特に交配

可能性を強調するが,生態学でも個体群を交配集団と捉えておくことは重要である。

しかし,どの程度隔離されれば異なる個体群とみなすかという基準はなく,さらに小

単位の交配集団に分割できる個体群をメタ個体群,各小集団をデームとか分集団と呼

ぶことも多い。

このような個体群の構造は近縁種の種間関係にも影響する。たとえば,競争関係に

ある2種が同一地域に生息すると競争排除則によりどちらかが絶滅するが,生息地が

たくさんのパッチに分かれ,両種がメタ個体群を形成していると,競争には強いが分

散力の劣る種と競争には弱いが分散力に優る種の共存が可能となる。

 

A 個体群密度

◆個体群密度

密度は一定面積あたりの個体数と定義され,また,一定面積あたりの同種生物の総

重量のことを生物量(biomass)または,現存量(standing crop)という。単位面積は,それ

が平面,あるいは立体空間であるだけではなく,1本の木,あるいは1枚の葉でも成立

する。この空間は限られた空間であるから,ここに生活する個体の数,すなわち個体

群密度で個体の総数を推定することはむずかしい場合がある。この空間に隣接してい

る空間で同じ個体群密度を保有しているとは限らないからである。しかし,一般には

ある単位空間の個体群密度を基準にして,個体群の消長を論じることが多い。

 

 

B 個体群の成長曲線

◆個体群の成長曲線

 指数曲線は,時間tにおける個体数をNt1個体あたりの平均増殖率(1個体あたりの

出生率と死亡率の差。内的自然増加率とも言う)rとすると,dNtdtrNtと表さ

れる。つまり,個体数の瞬間増加率(Nttによる微分)は個体数にrをかけたものにな

るはずである。この微分方程式は以下のように解くことができる。

 dNtdtrNt

 1NtdNt = rdt 両辺を積分すると,

 logeNt = rtC  (1Ntの積分はlogeNt)

 Nt = ert×ec

 t0における個体数(初期個体数)N0とする,ecN0

   ∴ Nt = N0ert

この式は,マルサス型増殖モデルと呼ばれることが多い。

 成長曲線(S字状曲線)は, dNtdtr(1NK)Ntと表すことができる。つまり,

個体あたりの増殖率を密度依存型とし,個体数が環境収容力Kに近づくほど小さくな

るようにしてある。尚,この微分方程式は解くよりもこのままの方が分かりやすく便

利であるため,微分型ロジスティック式と呼ばれている。

 

実験14 個体群の成長曲線―ウキクサを用いて―

 

C 密度効果と相変異

◆密度効果

 個体群にみられる個体間の競争・協同関係と,個体群の生活を保持する上で必要な

環境要因(光・温度・栄養など)に対応して個体群密度は決まってくる。生物の生活に対

して,個体群の密度がおよぼす密度抑制機構を密度効果という。ある一定の個体群密

度で,生物の生理的・形態的性質の発現が最適になる場合を,最適密度が認められる

といい,おもな研究者Alleeの名をとってアリー型密度効果という。昆虫類・等脚類,

きょく皮動物,原生動物・細菌などでこの型の密度効果が認められる。また,密度が

増加するにつれて増殖率が急激に減少するなどの悪影響がみられるショウジョウバエ

型,アリー型とショウジョウバエ型の中間型(アズキゾウムシなど)がある。最適密度の

場合,個体数の増加だけでなく,一つの個体の生存時間,発育速度などがもっとも高

くなる。無脊つい動物などでは個体間の相互関係,協同がそれぞれの個体の生存を

確保し保証することがあるからである。このように個体群密度が個体あたりの増加率

に促進の効果を及ぼす場合,これをアリー型密度効果という。

 

◆相変異

多くの昆虫の個体は生息密度(こみあい)の程度で体重や行動や産卵数などに多少の

変化をみせるものだが,野外でしばしば大発生する昆虫の中に,形態,色彩,生理,

行動などが顕著な変化をする種が知られている。ワタリバッタ,ヨトウガ,ウンカ,

アリマキ類などに見られ,そのような現象を相変異といっている。このような種では

密度に対応した(低密度と高密度の両方向に)適応的反応が出現するのであるが,それは

遺伝的にプログラミングされたものであると考えられる。

 相変異の例として最も顕著で有名なものは,ワタリバッタの場合である。ワタリバ

ッタ類は,高密度状態では群生相(phase gregaria)となり群飛するのに適した形態や生理

状態になる。すなわち長翅で集合性がつよく褐色で飢えに対する耐性が強い。一方,

低密度状態では孤独相(phase solitalia)となり,小型で短翅で緑色である。このようなワ

タリバッタ類は10種ほどが知られ,主に世界の砂漠地帯の周辺のステップ地帯に分布

している。そのようなところでは雨量の年次変動が大きく,年による草の生育状態に

大きな変化がある。ワタリバッタ類はそのような環境変化の大きい場所に,特に移動

力を強大にして適応していると考えられる。孤独相から群生相への移行のきっかけは,

前線性の風による吹き寄せや,寄せあつめられた成虫が集中産卵し,しかも孵化率が

高くまた天敵による抑制も十分に働かなかったことによるものと考えられている。そ

うなると幼虫密度が上昇して,発育時の相互刺激により群生相へと変化していく。行

動上は,幼虫期には学習によって集合性や行進行動の能力が高まり,成虫になったと

きもなお高密度のままであれば集合性がさらに強化されて群飛行動を行うようになる。

そして,大発生の状態が何代も持続し,気象要因や天敵による個体数の減少を招くま

で,大規模に移動していくのである。

 

 








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