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第3節 動物の分類と系統

 

 

A 動物の分類

◆磯の動物

原生動物 「波打際の砂の間には,Tracherocercaなど,細長い体形で,刺激を与

えるときゅっと体を縮め,しばらくするとまた体を伸ばして砂の間をすりぬけるよ

うに動きだす特徴的なせん毛虫類がいる。海産せん毛虫類は80種以上記載されて

いる(フェンチェル,1969)。原生動物は単細胞からなり,細胞内に各種の細胞小器

官があって,運動,食物摂取,浸透圧調節などの働きが分化している。いくつかの

グループに分類され,分類学的に多系統的な動物群と考えられている。

 海綿動物 磯の岩にだいだい色や黒,うす紫色など色とりどりのかたまりがつい

ているのを見ることがある。これは,ダイダイイソカイメン,ムラサキカイメンな

どという海綿のなかまである。このなかまは,水生,固着性で,食物をこしとって

食べる動物群である。下図のように一部の細胞がもつべん毛によって体内に水流を

おこし,この水から食物となる有機物質の小粒をこしとっている。海綿の体の構造

は原生動物あるいは藻類の群体の統合によってできたものと考えられている。

 刺胞腸動物 潮間帯では,貝殻などを表面にくっつけたヨロイイソギンチャクや

ウメボシのような色をしたウメボシイソギンチャク,もえぎ色のミドリイソギンチ

ャクなどをよくみかける。その他,小さなイソギンチャクのようなものが集まって,

枝分かれした木の枝のような形になったヒドロ虫類,サンゴ礁をつくる石サンゴ類

もこのなかまである(教科書p.13219)

 扁形(へんけい)動物 磯の転石をおこしてみると,石の裏を,紙のように薄いぺら

ぺらした生きものが,すーっとすべるように動くのをみかける。12cm位の細長い

灰色の生きものはウスヒラムシ,5cm位で幅が広く,こげ茶色で,前の方に2本の

短い触角のあるのが,ツノヒラムシである。どちらも,扁形動物の渦虫(うずむし)

である。このなかまは,海以外にも生活している。再生実験などによく用いられる

ナミウズムシ(プラナリア)も扁形動物である(教科書p.13221)

袋形(たいけい)動物;最近までは,ワムシ類(輪虫類)(教科書p.13222)と腹毛

(イタチムシ,オビムシなど)をあわせて輪形(りんけい)動物とし,カイチュウのよ

うな線虫類とハリガネムシのような線形類とをあわせて円形動物としていたが,

線虫類の研究が進むと,カイチュウのような内部寄生虫は,むしろその一部分で,

陸上や海浜の砂泥の中で自由生活をするものが多いことがわかってきた。しかも,

そうした自由生活の線虫類は,腹毛類と縁が近いことが明らかにされてきた。そこ

で,ワムシ類,腹毛類,線虫類,線形類を全部あわせて一つのグループとし,袋形

動物門とよぶ研究者もいる。

 軟体動物 体の腹側が足になっているので腹足類とよばれる巻き貝に属するマツ

バガイ,ウノアシガイ,バテイラ,タマキビガイ類,オオヘビガイ。足が斧の形を

した斧足類とよばれる二枚貝に属するケガキ,イガイ,ムラサキインコガイ。小判

形の体で背に8枚の板状の殻がならんでいるヒザラガイ類(多板類)は一番原始的な

体制をもつといわれる。腹足類では,その他に,アメフラシ類やクツナミ貝類,ウ

ミウシ類をみかける。陸上にすむ巻き貝の一種であるカタツムリとナメクジも軟体

動物である。ナメクジはカタツムリに近縁で,貝殻が退化した類であるが,その体

には骨や甲(こうら)のような固い骨格が全くない。そして,殻からのびだしたカタツ

ムリの体を調べると,ナメクジと全く同じようである。このように貝殻以外には骨

格がなく,体が筋肉質で軟らかいのが軟体動物全体の特徴のひとつである。

 環形動物 磯には,釣りの餌に使われるゴカイやイソメなどの環形動物がすんで

いる。細長い体をよくみると,ほぼ同じ大きさのたくさんの節にわかれていること

に気づく。この節は外側だけのものではなく,体の内部も節ごとに一枚の薄い膜で

仕切られていて,一つずつの部屋になっている。この一つ一つの節を「体節」とよ

んでいるが,体がこのような多くの体節からできている動物のなかまの一つが,環

形動物であり,もう一つの大きなグループが節足動物である。節足動物のうち,最

も繁栄している種は陸上生活に適応した昆虫類で種名のわかっているものだけで

も,約85万種,動物全体を約114万種としても,その約75%を占める巨大な動物

群であるが,海で生活している種は極めて少なくウミアメンボ,ウミユスリカなど

数百種程度である。磯の節足動物はなんといってもエビ,カニ,ヤドカリ,かいあ

し類(ケンミジンコ)やフジツボ類が属する甲殻類で約26000種が知られている。

 棘皮(きょくひ)皮動物;潮間帯では,ウニやヒトデのなかまがよくみつかる。こ

れらの動物はナマコ類やクモヒトデ類を含む棘皮動物であるがすべて海産である。

体は放射相称のものが多く,体腔の一部が水管系となってそこに海水を入れ管足を

動かして運動,呼吸,栄養摂取,感覚などの働きをする(教科書p.13324)。体内

には,炭酸カルシウムの骨片からなる内骨格があり,骨片の形態で分類できるグル

ープもある。

 原索動物 このなかまは背骨のない動物であっても脊索(せきさく)(教科書p.136

27)という背骨に似た原始的なものをもっているばかりでなく,他にも脊椎動物

と共通する点が多い。したがって,この動物群は,脊椎動物が無脊椎動物から進化

してきた道すじを考える上で,おたがいの間の橋渡しとなっていると考えられる重

要な動物である。磯では,岩礁のオーバーハング部分の下側などで群体をなしたイ

タボヤ類がよくみつかる。このなかまには,ホヤ類(尾索類)の他に尾虫類(オクマボ

),サルパ類(ウミタル・ヒカリボヤ),頭索類(ナメクジウオ)が知られている。

 

実験10 磯の動物の分類

 

B 動物の系統

◆動物の体制と系統

動物の体制の進化は,形態学,発生学,古生物学などの立場から議論され,現在,

下図に示すような動物の系統,類縁関係が推定されている (Margulis and Schwart

1987)

 この系統樹の中にも,明確な結論が得られないままになっている問題も多いが,

ここでは,和田・佐藤(1993)に従って,動物を分類する場合の体制の相称性体腔

旧口新口動物群などの概念について説明していきたい。

 上の図では,形態学的に単純な動物群から,より複雑な体制をもった動物群へと

並べてある(右から左へ)。まず,器官が分化せず,外形も明確でない海綿動物門と,

最近,発見された板状動物門Placozoaが,側生動物群として,明確な組織・器官の

分化が認められる真正後生動物群から分けられている。真正後生動物は,次に,

制の相称性をもとに,放射相称性を示すクラゲ類(刺胞動物)とクシクラゲ類(有櫛動

)およびそれ以外の左右相称性を示す動物に二分される。動物では,その発生の際

に,内胚葉・中胚葉・外胚葉の3種類の組織層が分化する。側生動物や放射相称動

物は明確な中胚葉をもたないことから,二胚葉性の動物としても区別されている。

 より複雑な体制を発達させた左右対称動物は,さらに,体腔とよばれる体の隙間

の構造などを基準にして三つのグループに分けられている。体腔には,2種類あり,

発生の初期に胚の割球の間にできる隙間(卵割腔)に由来する原体腔と,中胚葉性の

組織から二次的に生じてくる真体腔とがある。真体腔には,それを裏打ちする腹膜

とよばれる中胚葉性の上皮があり,これによって,原体腔と区別される。初めてで

きた卵割腔がやがて中胚葉に埋められた形でなくなる無体腔動物,原体腔だけをも

ち真体腔をもたない原体腔動物,真体腔をもつ真体腔動物の三つのグループである。

真体腔は,さらに,中胚葉が裂けてできる裂体腔と,原腸先端の中胚葉性の腔か

ら生じる腸体腔2種類に分類される。前者の裂体腔をもつ動物は,原腸陥入部が

口になるか,または,原腸の閉じた付近に口が形成されることから旧口(前□)動物

とよばれる。また,後者の腸体腔をもつ動物は,原腸陥入部は肛門となり,その反

対側に口が新しく開くことから新口(後口)動物とよばれる。この二つの動物群の間

には,新口動物が放射卵割を行うのに対し,旧口動物は主にらせん卵割を行うなど

の違いもみられる。これらの関係を高校生物向きに配列した系統樹を次の図に示す。

 

◆分子系統樹

自然分類の考え方に従って,生物の系統を化石や現存生物の形態,発生様式など

の比較による定性的方法で調べ,類縁関係を推定して系統樹をつくった場合,使用

した方法のちがいによって,いくつかの異なった系統樹がつくられることがある。

これまでは,このような場合,どの系統樹がより真実に近いものかを証明する方法

がなかった。20年ほど前から発展してきた分子生物学が,近年,この間題に一つの

解答を与えている。それは,生物体をつくっているDNARNAやシトクロム,ヘ

モグロビンなどの高分子の組成と生物の系統の間に深い関係のあることがわかり,

2つの種の差を数で表わすことができるようになったからである。定量的に数値を

使えることは,従来の系統樹が単に定性的な経路を示すだけであったのに対し,非

常に有用で,進化・系統に関する学問が,これから急に進歩することが期待される。

シトクロムcによる系統樹  好気呼吸を行う生物は,電子伝達系を構成するシトク

ロムcのタンパク質部分を比較すると,大部分の生物では,104個のアミノ酸の

うち,多くの共通部分をもっている。種によって異なっている部分を比較すると右

表のようになる。たとえば,N末端から数えて15番目のアミノ酸について,DNA

の遺伝暗号の変化は次のように生じたと考えられる。つまり,Val(バリン)Glu(

ルタミン酸)になるためにはDNA1か所,ValSer(セリン)になるためには2

所変化が起こる必要がある。したがって,アカパンカビはヒトよりも酵母菌に類縁

が近いということになる(前表)。このような考えにもとづいて,シトクロムcの一

次構造の変異からDNAの塩基が何回変化したかを推定し,その結果を系統樹とし

て表したものが次図である。この系統樹と従来の形態その他をもとにした系統樹と

を比較して,一致した場合には,その系統樹がより真実に近いと考えられる。

 

 

シトクロムcのヘム結合部の一次構造

N末端から数えたアミノ酸

13

14

15

16

17

18

19

ヒト

-Lys

-LCys

-Ser

-Gln

-Cys

-His

-Thr

ウマ

-Lys

-TCys

-LAla

-Gln

-Cys

-His

-Thr

酵母菌

-Arg

-Cys

-Glu

-Leu

-Cys

-His

-LThr

アカパンカビ

-Gly

-TCys

-Val

-Ala

-Cys

-His

-Ala

 

 

     シトクロムcによる動物の系統樹(数字は変換した塩基数)

 

 

分子時計 次表は,各生物のヘモグロビン分子(α鎖)を比べたときの,アミノ酸の

違いの数を示してある。ヒトとウシを比較してみると,両者のヘモグロビンは,141

個のアミノ酸のうち17個のアミノ酸を異にしている(教科書p.18371参照)

 

 一方,化石の研究から,ヒトがウシと共通の祖先から分岐したのは,約8000

年前と推定される。したがって,1個のアミノ酸が変化するには,ほぼ1000万年

(8000万年÷(17÷2)17÷2は,共通の祖先からヒトとウシそれぞれで同数のアミ

ノ酸が変化するため)かかることになる。また,ヒトとサメでは79個も違う。この

相違度をもとに系統樹をつくると上図のようになり,これが化石から求めた系統樹

とよく一致する。このようなタンパク質やDNAで,その中のアミノ酸や塩基の置

き換る速さが一定であることがわかり,時間を刻みこんでいることになるので,分

子時計ともよばれる。アミノ酸や塩基の置換率(置換速度)が一定である理由は,こ

れらの置換率が突然変異率に比例する確率的な現象であることによる。

5SrRNAによる系統樹 本物の時計に秒針・短針・長針があるように,分子時計に

もその種類によって,分子の置換速度の速いものと遅いものがある。類縁関係の近

い種間で,系統関係を調べる場合には,前述のヘモグロビン分子を構成するアミノ

酸のように,比較的速い置換速度をもつ分子を分子時計として利用するのが有効で

ある。類縁関係の離れた生物間の系統関係を調べる場合には,置換速度の遅い分子

を用いる必要がある。たとえば,5SリボソームRNA(5SrRNA)とよばれる分子は,

アデニン・ウラシル・グアニン・シトシンの4種のヌクレオチド塩基が120個ほど,

鎖状につながってできている物質であるが,この分子の置換速度は1塩基座位当た

10億年に0.3回程度と非常に遅いため,時計の短針に相当する働きをもった分子

時計として使用できる。これを用いて分子系統樹をつくるためには,まず,各種の

生物から5SrRNAを分類精製し,塩基の一次配列を決定する。次に,その配列を各

生物間で比較して,ヌクレオチド塩基の相違度(%,相違座位数÷比較座位数)を計

算し,これを全配列について求める。さらに,相違度から進化距離を計算し,進化

距離の小さい順に生物を並べると分子系統樹ができる。

 

◆脊索動物(原索・半索脊椎動物)の分類の問題

脊椎動物は,脊索とよばれる棒状の器官,その背方にある中空の神経管,および

鯉裂(咽頭側壁の裂け目)を少なくとも一生の一時期にもつ動物として,尾索類・

頭索類と共に脊索動物としてまとめられている。しかし,これらの動物群がどのよ

うな進化経路を経て現在に至っているかについては,前世紀から長い議論が続いて

いる。その主な論点は,脊索動物の祖先として,現在のホヤのような固着した生活

を営む動物を想定するか(AB),それとも,現在のナメクジウオのように自由に

動きまわる動物を想定するか(C)にある。

Garstang(1928)は,固着性の祖先(A)からネオテニー(幼形成熟)による進化が起こ

って,現在の脊椎動物や頭索類が生ずるとした。また,尾索類の系統でも,浮遊性

のサルパ様祖先の幼生からネオテニーによって,成体でも脊索が残っているオタマ

ボヤが生じてきたと考えている。Berrill(1955)も,固着性の祖先が,一度のネオテニ

ーによって,脊椎動物,頭索動物,オタマボヤを生みだしたと考えている(B)

一方,自由に動きまわる動物を祖先と考える説は,時岡(1971)に代表され,自由遊

泳性の祖先がその運動能を発達させ,脊椎動物や頭索類を生みだしたと考えている

(C)。また,尾索類の系統では,最も早く分岐したオタマボヤでは,成体の運動

能が残り,完全に運動能を失い固着性に移行したものがホヤであり,浮遊性に移行

していったものがサルパ類であると考えている。

 

 前述した分子系統学では,これまでのところ,5SrRNAによる研究も,18SrRNA

による研究も,棘皮動物と脊索動物が近縁ではないことを示唆してはいるが,脊索

動物の進化については,明確な答をだせずにいる。

 次の図は,和田・佐藤の18SrDNAの研究から導かれた系統樹である。この系統樹

からいえることは(1)ホヤ,サルパ,オタマボヤを含む尾索類のなかまが単系統群と

してまとまること,さらに,この尾索類の系統では,オタマボヤが最も早く分岐し

ていることである。(2)頭索類のナメクジウオと脊椎動物が近縁であることは明らか

である。しかし,(3)尾索類が脊椎動物とナメタジウオを含むグループに含まれるか

どうか,および,半索動物,棘皮動物と,これらの動物群の関係がどうかについて

は明確な答を導くことはできない。

 

 尾索類は脊索や脊椎動物の甲状腺にあたる内柱など,脊椎動物や頭索動物と多く

の共通の形質を有しており,脊索動物として一つのグループにまとめられることに

ついては,ほぼ理解が一致している。また,上図に示した尾索類でのオタマボヤの

早い分岐を考えると,脊椎動物の進化の経路のうち,脊椎動物の祖先にホヤのよう

な固着性の動物を想定した経路は,固着性祖先説が2度のネオテニー進化を想定し

なければならず比較的考えにくい。運動性祖先説は,それぞれのグループでの進化

的傾向から比較的簡単に現在みられる体制を説明することができる。進化のできご

との数の最も少ないような進化経路を考えようとする最節約(パーシモニー)の立場

からも,後者の自由に動きまわる祖先を考えた経路の方が支持されよう。

 

◆ヘッケル説とハッジ説

ヘッケルの「反覆説」の内容をまとめると,「個体発生(個体の胚発生および出生

後の生活史)の過程では,祖先の成体型が系統発生(系統の進化史,成体段階の系列

として描かれる)の順序でくりかえされるが,ただ,幼生生活への適応で発生過程の

一部が変化することもある」ということである。また,ヘッケルは,系統発生が個

体発生の要因になるというようにいっているが,これは逆であって,個体発生の変

化が系統発生の原因になるのである。現在の多くの研究者はヘッケルの反覆説より

も,半世紀近く前にたてられたドイツのフォン・ベーア(E.von Baer)の法則の方が正

しいと考えている。ベーアの法則は四つに分かれているが.まとめると「動物の発

生は,その初期ほど一般的な特徴があらわれ,発生が進むにしたがって,特殊な特

徴があらわれてくる。そして,ある動物の若い時代の形態が,他の動物の成体形で

はなく若い時代の形態に似る」というものである(伏見他編〔1959〕進化−その必然

と偶然−,中山書店)

 ところで,ヘッケルは,海綿動物以外の後生動物はすべて刺胞動物を経て,進化

したという刺胞動物説(ガストレア説)をたてた。この根拠になっているものが「反

覆説」である。へッケルは,後生動物の過去の祖先を想定し,モネラ段階,アメー

バ段階,モネラ段階(シンアメーバ)を経て,ブラステア(胞胚動物)が生まれ,つい

で,ガストレア(のう胚動物)ができ,以後の進化のもとになったと唱えた。この両

動物は,それぞれ,動物が発生の過程で形成するブラストウラ(胞胚)およびガスト

ルラ(のう胚)にあたるものでのう胚動物のままで足ぶみしながら変化し,多様化し

てきたのが,現在の刺胞動物だと考えた。この考え方に対して新しい説を唱えたの

が,ユーゴスラビアのハッジ(HadziJ)であり,この考え方は,イギリスの発生

学,進化学の権威者であったド・ベア(G.R.deBeer)により支持された。

 

 刺胞動物説反論の第一の理由は,刺胞動物を単純に二胚葉動物ときめるのが早計

だということにある。刺胞動物の内外の両胚葉間(中膠とよばれる)には様々な細胞

がある。それらの細胞には,もっと高等な動物にみられる結合組織の細胞に相当す

るものなどがあり,これは中胚葉の細胞に相当する。このことから,刺胞動物は三

胚葉をそなえた動物であり,胚葉の関係で刺胞動物の原始性を決定できないとして

いる。第二の理由は,ばらばらの細胞個体が群体となり,一個体のような体制をそ

なえたといっても,その性質が遺伝的となって多細胞動物を生じたとは考えにくい

ことである。第三の理由は,刺胞動物説に代るもっと妥当な説を提出しうるという

ことにあった。

 ハッジによると,原生動物から後生動物への道は,多核のせん毛虫類から扁形

動物の渦虫類へという方向で進化したとされる。従来の学説では,せん毛虫類は原

生動物として特殊化しすぎてしまったもので,進化の系統上ではゆきどまりの道だ

ということになっていたが,ハッジ説は刺胞動物を経由しないで扁形動物が生じ

たと考えた。また,ハッジは刺胞動物の発生を研究し,最も単純そうにみえるヒド

ロ虫の神経系が最も進化していることより,後生動物は,その成立時点から基本的

に左右対称であったと考えた。したがって放射相称の刺胞動物である花虫類(イソギ

ンチャク),ハチ虫類は,左右相称からの変形にすぎないとし,起源となった左右相

称動物は扁形動物の無腸目(渦虫類)が進化したものであろうと主張した。ハッジ

とへッケルの系統樹の比較を次図に示す。どちらの系統樹が正しいか。それを決め

るのは,ハチ虫類の系統上の位置である。ハチ虫が花虫類により近縁であれば,ヘ

ッケル説(a),ヒドロ虫類に近ければハッジ説(b)が正しいことになる。5SrRNA

を利用した分子系統樹(下図および註)は,ハッジ説に都合のよい結果をえている。

この意味するところは,後生動物は最初から最後まで,基本的には左右相称のボデ

ィプランであって,決して,反覆説はこの段階には適用できず,刺胞動物の放射相

称性は,一種の退行現象であるということになる。しかし,分子系統学の結果は「分

子の証拠はハッジ説の正しさを証明した」のではなく,「無数にある生物の形質の中

から生体高分子を二つえらびだし,いくつかの生物種で比較したところ,ハッジ説を

支持する結果がえられた」というのが正確な表現であると述べている馬渡(1993)〔遺

47124347〕の見解を大切にしたい。

 

 

系統分類学の研究史

 物に名前をつけ,その形質を記載して,その特徴をもとにいくつかの分類群にまとめるという方法は古くから行われていた。古代ギリシアの大哲学者であり,「生物学の父」,「動物学の父」といわれたアリストテレスは,属(または,“類”genos)は一般であり,種(eidos)は属の中の特殊なものであるとして,すでに,属と種を学問的に規定していた。この考え方はフランス植物学の父とよばれるツルヌフォールによって分類のための属と種および分類体系の確立へと発展させられていった。彼の「基礎植物学」は6738846種の植物が記載され,植物全体を花の形によって14綱に分け,さらに,果実.種子によってそれぞれの綱を目sectionに小分けしている。植物を花の形という一定の形質によって分類したことは画期的なものであった。1730年頃ツルヌフォールの分類体系に代わってリンネは植物を雄しべ,雌しべで分類する新しい分類体系を考案し,「自然の体系」(1735)として発表した。リンネの分類体系は生物の類縁関係を反映した自然分類ではなく,人間の立場から考えた実用的で形式的な人為分類であったと考えられている。分類学が自然分類の方向へと動きはじめるには,アダンソンやアントワーヌ・ロラン・ド・ジェシューの出現をまたねばならなかった。動物の分類はラマルクやキュヴィェが現われるまでは,アリストテレスの分類体系にとどまっていた。ダーウィンは「種の起源」の序文でラマルクの進化説を過小評価しているが,それは自分の進化のしくみについての説明がラマルクと全く異なっているにもかかわらず,一般の人々がそれを混同することを恐れたからだといわれている。ダーウィンの進化論を援護した生物学者の一人がヘッケルである。彼は生物が進化することを認め,進化の道すじを示す系統樹をつくり,系統分類学への道を開いた。

BC 384322 アリストテレ

 ス 動物誌,動物部分論

16561708年 ツルヌフォー

 ル 基礎植物学(1694)

17071778年 C.vonリンネ

 自然の体系第1(1735)

 植物種誌(1753)植物の学名

  の始まり

 自然の体系第10(1758)

  動物の学名の始まり

17271806年 ミシェル・ア

  ダンソン

 セネガルの自然誌(1757)

17481836年 アントワーヌ

  ・ロラン・ド・ジェシュー

 植物属誌(1789)

 植物諸科全2

       (17631764)

17441829年 ラマルク

 動物哲学(1809)

 無脊椎動物学(18151822)

17691832年 キュヴィエ

 動物自然誌要綱(1798)

18091882年 C.ダーウィン

 種の起源(1859)

18341919年 E.ヘッケル

 ー般形態学(1866)

 体系的系統学3(189496)

18841972J.ハッジ

 後生動物の進化(1963)

 

 








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