トップ生物II>第2部 分子からみた遺伝現象>第1章 遺伝を担う核酸>第2節 遺伝情報の発現

2節 遺伝情報の発現

 

A タンパク質の合成

◆タンパク質の合成

 タンパク質合成の第1ステップはアミノ酸の活性化である。ATPのエネルギーを得

てペプチド合成における連結反応が可能になるように活性化される。

アミノ酸+運搬RNAATP → アミノアシルRNA

ATP →  AMP+ピロリン酸

 2行で書ける反応であるが実際は非常に複雑である。正確な配列でアミノ酸の連結

が行われるためには,それぞれの運搬RNAにはその(アンチ)コドンが指定するアミノ

酸が結合しなければならない。この反応に関与する酵素は,その両者を認識しなけれ

ばならなくてはならない。この酵素は,アミノ酸活性化酵素とよばれ,20種類のアミ

ノ酸と4060種類の運搬RNA(1種類のアミノ酸に対応するRNA23種類ある)

とから基質を選び出している。つまり,アミノ酸とRNAの両方に対して特異性をも

っている。生成したアミノ酸−RNA結合物は,RNAのアンチコドンが,これがリボ

ソーム上で伝令RNAのコドンと対応することになる。

 この転移RNAとそれにアミノ酸を結合するアミノアシル転移RNA合成酵素に人工

的に変異を起こして,遺伝暗号で設定されている20種類のアミノ酸以外をもった人工

転移RNAを作成することが可能である。それを利用すれば,自然界には存在しない

ようなアミノ酸をもつ「タンパク質」を作り出すことができる。

 リボソームには,RNA6070種類のタンパク質が含まれているが,それぞれの

作用についてはまだよくわかっていない。リボソームは伝令RNAを滑るようにして

移動し,そのコドンに従ってアミノ酸が次々に連結されていく。その際,グアノシン

三リン酸(GTP)がエネルギー源として使われる。なお,ペプチド鎖はN末端から合成

されていく。1本の伝令RNA上にいくつものリボソームがついて,同時にいくつもの

ペプチドを合成される場合が多く,これをポリソームとよぶ。

 

◆リボソームの形

 リボソームは小二つの粒子(サブユニット)より成り,れらはふつう雪ダルマに似

た形に描かれる。しかし,実際には複雑な形をしている。伝令RNAが結びつくのは

小さい方の粒子である。教科書では,伝令RNAの結びつきやそれと運搬RNAとの対

応を示すために,ふつうの雪ダルマ形にしてある。なお,二つの粒子が結びつくのは

伝令RNAの結合後である。

 

B 塩基配列とアミノ酸配列

◆トリプレット

 遺伝暗号が三塩基組であることに初めて気づいたのは,ガモフである。ガモフは,

ロシア生まれのアメリカの理論物理学者で,「不思議の国のトムキンス」など,興味深

い科学の解説書の著者として有名である。しかし,彼は間違いもおかした。生物は無

駄をしないから,一つの塩基を重複して読む,たとえばGCCGGGと並んでいれば,

GCCCCGCGGGGGというような暗号であると考えた。その後の研究で,遺伝

暗号は重複することがなく,開始コドンと停止コドンの間を正確に3個ずつ読み取ら

れていくことが明らかになった。

 ニレンバーグ(M.W.Nierenberg)の解読のしかたは画期的であった。人工的な暗号(

工合成した塩基組)を加えるという発想である。もし,彼のこの発想が出なかったら,

遺伝情報の解説はずっと遅れたであろう。彼以後,オチョア(S.Ochoa)(核酸の生合成で

1959年にノーベル賞を受賞),コラーナ(H.G.Khorana)らのライバルらの努力もあって,

1960年代のなかばに,遺伝暗号は解読された。ニレンバーグ,コラーナ,および運搬

RNAの構造を研究したホリーの3人は,1968年度のノーベル医学生理学賞を受賞し

た。

 コドンの中で,UAAUAGUGAはタンパク質の読み終わりを意味する暗号で,

伝令RNAにこの暗号があると,そこで翻訳が停止する。それで,この三つを,終結

コドンという。一方,AUGは,メチオニンの暗号であるとともに,翻訳の開始を示

す暗号(開始コドン)でもある。この暗号が初めにあれば開始を,中途にあればメチ

オニンを指示する。塩基配列のデータの中でATGがあった場合,それがメチオニンを

意味しているのか,あるいは開始コドンなのであるのかの判定は時として困難である。

細胞は正確に間違えずに開始コドンは開始コドンとして使用する。

 開始コドンと終止コドンに挟まれた3個ずつの読み取られる枠組みをフレームとい

う。フレームシフトとはその読み取られる型が1個あるいは2個ずれることを言う。

塩基が余分に挿入されたり1個欠けてしまうような変異が生じると,それ以下でフレ

ームシフトが生じるためにアミノ酸配列が異なってしまう。この様な異常タンパク質

は機能を失うばかりか,凝集したり新たな機能を持つようになり,細胞機能に大きな

影響を及ぼすことがある。

 遺伝暗号が,生物に共通していることは,次のことで明らかになった。ニレンバー

グらが行ったように,リボソーム,運搬RNA,酵素,アミノ酸,ATPなどを含む系(

ンパク質合成系)に,人工暗号を加えると,ポリペプチドが合成される。そのとき,ニ

レンバーグらが用いたのは,大腸菌から分離したリボソームであったが,他の生物の

細胞(ヒトの細胞や酵母の細胞など)からとったリボソームを用いても,同じ暗号に対

しては,同じアミノ酸配列のポリペプチドが合成される。この遺伝暗号がいろいろな

生物に共通していることは,生物が一つの祖先となる生物から進化してきたことを示

す証拠の一つとなる。こうした「遺伝暗号の普遍性」は,ニレンバーグらの解読以後,

ずっと信じられてきたが,近年になっていくつかの例外もあることがわかった。

 まず,ヒトとウシのミトコンドリアに含まれているDNAの全塩基配列(ヒトでは

16, 569塩基対,ウシでは16,346塩基対)が決定された。そして,ミトコンドリアの遺伝

暗号は,核の遺伝暗号と部分的に異なることがわかった。核ではタンパク質合成の終

りを指令する暗号(終結コドン)UGAは,ミトコンドリアではトリプトファンに対応

し,核でイソロイシンに対応するAUAは,ミトコンドリアではメチオニンとなり,

ミトコンドリアの終結コドンはAGAAGG(共に核ではアルギニン)となっている。

また,ミトコンドリアではAUAは開始コドンとしても使われている。さらに,最近,

ゾウリムシなどの伝令RNAの塩基配列を調べると,ふつうの終結コドンであるUAA

およびUAGが,ひんぱんに存在し,それらは特定のアミノ酸に対応しているのでは

ないかと考えられるようになった。このように,遺伝暗号,特に終結コドンに関して

は,共通性が少ないのではないかというデータが多くなりつつある。

 

RNAエディティング

 エディットとは編集すると言うことである。伝令RNAの配列はゲノムDNAの塩基

配列と同じ(相補的)であるが,例外的に,転写後に一塩基が別の塩基に置き換えられ

る場合があることが知られている。植物や原虫ではまれではないが,哺乳類では神経

伝達物質のグルタミン受容体やアポリポタンパク質が有名な例である。

 グルタミン酸は,高等動物の中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質である。

化学調味料(グルタミン酸)をやたら使う料理をたらふく食った後に手足がしびれる症

状が出現することがあったが,これはグルタミン酸が脳神経を刺激したためである。

神経伝達物質にはそれを受容してその情報を細胞に伝える受容体がある。グルタミン

酸受容体にはさまざまなサブタイプがある。その一つで,グルタミン(Q)をアルギニン

(R)にかえるRNA編集が行われている。つまり, DNAの塩基配列がmRNAに転写さ

れた後に,1塩基が置換され,1アミノ酸残基の置換が生じる。遺伝子では,グルタ

ミン酸(Q)がコードされているのに対して,mRNAはアルギニン(R)に置き換っている。

このアミノ酸置換によってこの受容体の性質が変化する重要な「編集」となっている。

 脂質の輸送に関与しているアポリポタンパク質に,apo B-48apo B-100がある。

小腸で主に発現されるapo B-4848という名前は,このタンパク質がApo B遺伝子

がコードするタンパク質のN末端側48%に相当することに由来する。apo B-100は,

肝臓で合成されるが,その100apo B遺伝子がコードするタンパク質全長100%に

相当することを意味している。小腸では,B-100 mRNAmRNA転写後編集によりシ

トシンがウラシルに編集され停止コドンが生じ(ナンセンス変異)mRNAのコード領

域の48%までしか翻訳されずapo B-48が生成される。

 

◆イントロンとエキソン

 イントロンとエキソンを持った遺伝子が転写される場合,まずイントロンの部分も

含めたDNAの全塩基配列が転写される。次にこの転写されたRNA(伝令RNAの前駆

体という)から,イントロンの部分が切り離され,エキソンの部分がつなぎ合わされて,

伝令RNAができる。この過程はスプライシングと呼ばれる。スプライシングによっ

てつくられた伝令RNAが,リボソーム上で,タンパク質に翻訳される。なぜ,イン

トロンが挿入されているかについては,それにより遺伝子の組換えが容易になるなど,

いくつかの考えが提唱されているが,真の理由は不明である。

 伝令RNA5(開始コドンの上流)にも3(停止コドンの下流)にも非翻訳領域

といってアミノ酸をコードしていない領域がある。この領域は除去してもあまりタン

パク質の発現に影響を及ぼさない場合もあるが,時として,転写効率が著しく変化す

ることがある。また,このタンパク質には読み取られない領域の遺伝子異常(塩基配列

の変化)が原因とされる疾患も知られている(筋緊張性ジストロフィー)

 なお,真核生物の伝令RNAは,核でつくられてから,その両端に塩基が付加され

たり,メチル化されたり(修飾という)する。5末端には,ポリAポリメラーゼという

酵素が働いて,50200個のアデニン(A)が連なったpo1yA鎖が付加される。また,5

末端にはグアノシン三リン酸(GTP)が反応して,グアニン残基がつくられ,その残基が

メチル化されて,7−メチルグアニンになる。また,グアニン残基に隣接する12

のヌクレオチドの糖の20H基もメチル化される。このように伝令RNAの両端にで

きる構造を,キャップ構造という。これらのキャップ構造はエキソンにある非翻訳領

域と同様に翻訳されない。

 また。一つのアミノ酸はいくつかのトリプレットが対応するが,その中のいずれが

最も多く用いられるかも,細胞の種類によって定まっている。ヒトのタンパク質を大

腸菌に作らせるためには,ヒトの塩基配列そのままでは発現効率が低く,大腸菌が好

んで使用するコドン(単純に考えれば,大腸菌内に豊富に含まれるそのアミノ酸の運搬

RNAのアンチコドンに相当することになる)にヒト遺伝子(コード領域)を作り替える

必要がある。

 

◆タンパク質のスプライシング

 RNAのイントロンとエキソンのようなものがタンパク質(ポリペプチド鎖)にも存在

することが細菌や酵母で見いだされている。RNAのスプライシグと同じように一本の

ポリペプチド鎖の真ん中が抜け落ちて再結合する。抜け落ちるのがインテインで再結

合する両端がエクステインである。この反応は同じポリペプチド内で行われる自己触

媒的なスプライシング反応である。インテインの長さは400アミノ酸前後であり,そ

のN側とC末端が特徴的なアミノ酸配列となっている。天然のインテインは細菌や酵

母では100種類以上見いだされているが,哺乳類では確認されていない。インテイン

はある程度は特異的な配列を必要とするが,一本のポリペプチド鎖である必要はない。

エクステインAN末側インテインとC末側インテイン−エクステインBを別個のポ

リペプチド鎖として発現させても,この2本のポリペプチドが結合すると,インテイ

ンが脱落してポリペプチドABが生成される。エクステインは任意である(インテイ

ンの挿入部位によってスプライシングの効率は変化する)。たとえばクラゲ由来の蛍光

タンパク質(GFP)をインテインで分断しておけば,インテインが除去されたときに蛍光

を発することになり,結合タンパク質検出法や遺伝子のオンオフ法として応用が始まっ

ている。

 

C 遺伝子と酵素

◆アカパンカビの生活史

アカパンカビは,パンによく生えてくるカビでその特異な子のう形成サイクルから,

染色体交叉の研究や突然変異の研究に使われた。突然変異の代表的な表現形(遺伝子に

よる性質)は,培地の栄養要求性で,ほとんどグルコース (ブドウ糖)さえあれば育つ野

性株が,アミノ酸がないと増殖できなくなる。

 アカパンカビは,普通,菌糸を伸ばして生育する。この菌糸は個々の細胞から構成

され,共通の1細胞質の中に多くの核をもっている。どの核も1組みの染色体をもっ

ている。すなわち半数体である。無性生殖は,この菌糸の成長と核分裂のくり返しに

よって行われる。また分生子とよぶ無性胞子の形成によっても行われる。とくに注意

したいのは,この菌が半数体であり,無性生殖が半数体の核の有糸分裂によって行わ

れることである。また,アカパンカビは有性生殖も行い,2つの半数体の核が融合し

1つの2倍性の核となり,この核はやがて減数分裂して半数性になる。なお2つの

半数性の核の融合は交配型の異なった2菌株間で行われる。外見上は区別がつかない

が,2系統をいっしょに育てると子のう胞子を生じるが,同じ系統の2菌株ではそれ

が生じない。2菌株の核の融合した融合核は,子のうの中で減数分裂をして8個の子

のう胞子をつくる。1世代の長さが短く(1012),ビタミンを含む無機培地で手軽

に育てられ,半数性(優性形質によって劣性形質が隠されない)などの遺伝研究の利点

をもつ。

 

 教科書で説明に用いられた突然変異株は,アミノ酸であるアルギニンを培地に加え

ないと生育しないアルギニン要求株である。(この株は,シトルリンやオルニチンを与

えても生育しない。)つづいて,別の株はアルギニンとシトルリンのどちらかを要求す

るもの,また,アルギニン,シトルリン,オルニチンのどれかを与えてもよい株であ

る。アカパンカビの細胞の中で,アルギニンの生成は,下図のような過程で行われる

ことを考えれば,この3つの突然変異株の関係がよくつかめる。

 

遺伝子はタンパク質分子のアミノ酸の配列順序とそれを何時,何処で,どのくらい

つくるかを決定している。

 遺伝子はタンパク質のアミノ酸配列を決定することによって,その作用,例えば,

酵素ならその特異性を規定し,ひいては生物体内の酵素反応およびそれに関連する他

の化学反応をコントロールする。また,そのタンパク質が何時どのくらいの量つくら

れるか,そして,多細胞生物の場合にはどの細胞でという場所も規定している。遺伝

暗号表によりアミノ酸配列の情報は塩基配列から読み取ることが可能になったが,そ

の発現の制御(塩基配列に記載されているのは間違いないが)については不明である。

 この際,1つの遺伝子が1つの酵素作用を規定するというのが一遺伝子一酵素説(One

gene-one enzyme hypothesis)である。遺伝子が酵素と関係があるということは,ゴール

ドシュミット,ライトらによって考えられていたが,ビードルはアカパンカビの生化

学的遺伝学などの仕事から,遺伝子がそれぞれの反応を触媒する酵素の生成,あるい

は変更を直接に統御すると思われるデータを総合して,遺伝子は酵素を支配すること

によって,生体内の物質代謝の様式を規定し,しかも,その遺伝子と酵素の間には,1

1の関係があることを提唱した。さらに,酵素を含めて一般にタンパク質は伝令RNA

の塩基配列に基づいて作成されるので,タンパク質の特異性(アミノ酸の構成や空間構

)は,それに対応した特異性をもつRNAから受けつがれたものであり,さらにRNA

の特異性は遺伝子のDNAから受けつがれたものである。この考えによると,突然変異

によって遺伝子に構造上の変化が起こると,それは伝令RNAに伝えられ,それに対応

する酵素にも構造上の変化が起こり,これに伴って,酵素の働きの面で量的な,また

質的な変化が起こると考えられる。なお,酵素のなかには二本以上のペプチド鎖となっ

ているものがあり,一遺伝子一酵素説はより普遍的に一遺伝子一ペプチド

鎖となる。あるいは,遺伝子を完成したタンパク質の機能を総括的に規定していると

考えれば,多数のペプチド鎖の合成を一括して管理している単位とも言える。その場

合には,「遺伝子はそれぞれ1つの生理機能を制御し,その中には酵素以外の他の生化

学的な因子の形成も含まれる」という考え方もある。

 

◆フェニルケトン尿症とアルカプトン尿症

 白子,すなわち全身の皮膚や毛髪にメラニン色素の発達しない異常は,1つの劣性

遺伝子によって現れる突然変異形質である。メラニンは,表皮の深層にある細胞中に

生じる色素であるが,チロシンというアミノ酸に,チロシナーゼという酵素が作用し

て産生される。このチロシナーゼの活性が低下するとメラニンができないために白子

になる。この場合,酵素タンパク質そのものが作られなくなる場合,あるいは,タン

パク質としては存在するが,アミノ酸の異常により酵素活性が失われることが考えら

れる。

 また,このチロシンはフェニルアラニンというアミノ酸から特異的な酸化酵素によ

って産生されるが,この酵素に欠陥があると,フェニルアラニンが処理されなくなり,

多量に血液や脳せき髄液にたまって,いろいろな障害を起こしてしまう。余ったフェ

ニルアラニンが尿中に多量に排泄されるので,尿検査でたやすく診断される。これを

フェニルケトン尿症といい,比較的珍しい劣性遺伝病である。フェニルケトン尿症で

は,チロシンも産生されなくなるために,チロシンから作られるメラニンも不足して,

白子に似た皮膚や髪をもっている。

 チロシンはメラニン産生経路のほかに,別の経路を経てアルカプトンに変わり,こ

れがさらにアセト酢酸になる。この段階に作用する酵素が遺伝子異常により低下する

と,アルカプトンが多量に尿の中に排泄されるので,尿が黒くなる。また,この物質

が軟骨に沈着するので,眼のきょう膜や,耳殻が黒味をおびる。これをアルカプトン

尿症という。

 これらの代謝異常は,遺伝子に変異が生じたものであるから,現在のところ根本的

な治療法はないが,フェニルケトン尿症の場合は,乳児期にフェニルアラニン含有量

の少ない特別なミルクを与えることで,症状を抑えられることがわかっている。この

療法は少なくとも成人に達するまで続けられる。女性患者が妊娠したときは,胎児の

脳の発育に障害をもたらすので,フェニルアラニンを少なくしなければならないが,

胎児の発育にはフェニルアラニンは必要であり,慎重なコントロールが必要である。

 この療法は早く始めるほど効果的であり,現在では出生後すぐに血液検査を行い,

診断する方法が開発されている。

 ガラクトース尿症も類似の酵素異常による遺伝性疾患である。ガラクトースは,母

乳で育つ子供にとってエネルギー源として必要であるが,たまりすぎると白内障や精

神障害を起こす。思春期になるとガラクトース代謝に必要な酵素が現れる。

 

◆遺伝子疾患の意義

 遺伝性疾患は他の大多数よりも現時点では生存に不利益をもたらす。しかし,生物

の進化の一つの過程と考えられる。条件が変われば,そのような変異形質のほうが生

存に有利になる場合がある。鎌状赤血球貧血は現代社会では貧血をもたらす疾患では

あるが,マラリア感染症に抵抗性が強い。つまり,マラリアが蔓延している条件では

多少の貧血があっても致死的な感染から守ってくれるのである。

 受精卵の遺伝子診断により遺伝性疾患を誕生前に診断することが可能になってきた。

現状で不利益のある遺伝子異常を除去するのは,人間が行うこととは言え自然選択の

一つかもしれない。しかし,そのような遺伝子「変異」が計り知れない可能性を秘め

ている可能性がある。そうはいうものの,遺伝子疾患の子供を育てることは非常な負

担となる。

 技術的には生まれる前の選別が可能になってきた。このように今のヒトの価値判断

で子孫を選別することが,将来の人類にどのような影響をもたらすことになるのかに

ついて議論してみよう(答えは無い)

 

D DNAと遺伝情報

DNAの遺伝情報

 DNAに遺伝情報は全て記載されており,ゲノムプロジェクトのところで説明するよ

うにその塩基配列は比較的たやすく入手できるようになった。しかし,哺乳類ではイ

ントロンもあるため,塩基配列だけを眺めても,どのようなタンパク質がどのように

つくられるかはなかなか解らない。

 上記のような配列でもタンパク質としては3種類が考えられる(***は停止コドン)

1,#2は停止コドンが頻発するので,タンパク質をコードしているとすれば#3

可能性が高い。しかし,#1Alaアラニンで終了するタンパク質,あるいは,#2

Glyグリシンで終了するタンパク質の可能性もある。あるいは,イントロンというこ

ともあり得る。

 

 








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