トップ生物II>第1部 分子からみた生命現象>第3章 光合成と窒素同化>第2節 二酸化炭素の固定

第2節 二酸化炭素の固定

 

A カルビン・ベンソン回路

◆カルビン・ベンソン回路

二酸化炭素が固定され,有機化合物が合成される反応は葉緑体のストロマで行

われる。さきの反応過程で生成されたNADPHATPを用いて,CO2を還元して

デンプンなどの有機化合物を合成する反応である。この反応は温度とCO2濃度に影

響されるが,光の強さには無関係であるところから,以前は暗反応と呼ばれていた。

この反応はCO2から直接デンプンなどの有機化合物(C6H12O6)が生成されるのではな

く,いくつかの酵素反応で構成される複雑な回路反応過程で生成されることが,カ

ルビン(Calvin)とベンソン(Benson)によって明らかにされ,この過程をカルビン・ベ

ンソン回路とよんでいる。

 この回路は次の3段階にまとめられる。

(A) CO2が固定される段階。

 細胞中に取り入れられたCO2は,葉緑体内に存在するリブロース二リン酸(RuBP

C5化合物)と結合してC6化合物となるが,これはすぐに2分して,グリセリン酸リ

ン酸(PGAC3化合物)となる。今,この反応が3回起こると,6分子のPGAが生じ

る。

   3CO23RuBP6PGA

(B) 光化学反応で生成したATPNADPHH +が用いられ,PGAが還元されると,

トリオースリン酸(TPC3化合物)となる。

 6PGA6ATP6(NADPHH +)6TP6ADP6Pi6NADP

  TP1分子は回路からはずれて,いわゆる光合成産物を生成する。

(C) 残る5分子のTPから,CO2の受容体であるRuBPが再生する段階で,いくつか

の反応が含まれるが,要点として次のように表される。

     5TP+3ATP3RuBP2ADPPi

 

B 光合成の産物

◆効率のよい光合成経路(C4 -ジカルボン酸回路)

 長い間,緑色植物の光合成はカルビン・ベンソン回路によるものと考えられてい

た。しかし,1960年代に入って,アメリカのコーチャックなどがサトウキビなどの

熱帯植物には別の炭酸固定回路のあることを発見した。これが「C4 -ジカルボン酸

回路」または「C4 -サイクル」とよばれているものである。

炭酸固定をカルビン・ベンソン回路だけで行う植物では,CO2は五炭糖リン酸

(RuBP)と結びつき,すぐ分解されて2分子のグリセリン酸リン酸(PGA)というC3

合物になる。PGAC6化合物になり,その一部がショ糖やデンプンなどの同化産

物になる。残りは何段階かの反応を経てRuDPに戻る。CO2を取り込み,最初に合

成される物質がC3化合物(PGA)であるから,この経路で炭酸固定をする植物はC3

植物とよばれる。

 これに対して,C4とよばれる植物では,炭酸固定によって最初にC4化合物のオキ

サロ酢酸(OAA),つ

いでリンゴ酸やアスパラギン酸を合成する。次図のように,この反応は回路反応で

葉肉細胞の中で行われる(C4 -ジカルボン酸回路)。リンゴ酸やアスパラギン酸は維管

束鞘細胞に入り,ここで脱炭酸されてCO2を放出し,残りは葉肉細胞に戻りホスホ

エノールピルビン酸(PEP)となる。PEPは再びCO2と結合する。リンゴ酸やアスパラ

ギン酸から脱炭酸されたCO2は維管束鞘細胞の中でカルビン・ベンソン回路へ入っ

ていく。C4 植物でのCO2受容体であるPEPは,CC2植物の受容体であるRuBPと比

べ,CO2と反応しやすく,低濃度のCO2でも効率よくとらえることができる。したが

って,乾燥地で植物が気孔を閉じ,CO2濃度が低くなった場合でも,C4 植物はC3

物と比べて効率よく光合成を営むことができる。

 

 








本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2009-2012 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved.