トップ生物I 改訂版第3部 環境と動物の反応第2章 体液と恒常性>第3節 ホルモンと自律神経による調節

第3節 ホルモンと自律神経による調節

 

A ホルモンによる調節

ホルモン (Hormone)

ホルモンとは,細胞が生産する特定の有機物質で,通常体液(血液)によって運ばれ,他の細胞・組織に対し,その活動を調節する効果をもつ。このホルモンをつくる細胞を含む器官が内分泌器官であり,形態的には無導管腺という特徴をもつ。活動の調節を受ける器官が標的器官であり,内分泌器官と標的器官とは同一個体内にある点がフェロモンと異なっている。標的器官の細胞は,ホルモンがなくても活動を続けるが,その速度は非常に遅い。ホルモンは標的細胞の機能レベルを促進あるいは抑制する効果をもつ。

 

ホルモンの化学構造

ホルモンは化学的に大きく2つに分けられる。副腎皮質と性腺はステロイドホルモンを産生し,それ以外の内分泌腺は,タンパク質・ペプチド・アミノ酸誘導体のホルモンを産生する。

 

a.ステロイド系ホルモン

性ホルモンや副腎ホルモンで,いずれも分子中にステロイド環をもっている。

b.タンパク質・ペプチド・アミノ酸誘導体のホルモン

下垂体前葉から出るホルモン,下垂体後葉から出るバソプレシン,すい臓からのインスリン,グルカゴン,腸からのセクレチンはペプチド〜タンパク質。

アミノ酸としては,甲状腺のチロキシン,副じん髄質のアドレナリン,松果体のメラトニン等があげられる。

タンパク質系のホルモンは経口的に与えると,消化液によって分解され,無効になってしまう。したがって,薬としては注射薬とか座薬等で利用される。

 

セクレチン(secretin)

セクレチンは酸性の胃の内容物やタンパク質の消化物の刺激によって,十二指腸および小腸上部の粘膜から分泌され,主としてすい臓に働いて,すい液,ことに重炭酸塩と水の分泌を起こすホルモンである。

●セクレチンの少量投与の場合の生理作用

(1)すい臓からの水と電解質の分泌  (2)肝臓から胆汁への水と電解質の分泌増加

(3)噴門括約筋の抑制  (4)胃内容物の輸送遅滞  (5)胃酸分泌抑制

(6)胃ペプシンの分泌刺激  (7)十二指腸運動の抑制

●セクレチンの大量投与の場合の生理作用

(1)インスリン放出  (2)十二指腸腺刺激  (3)じん臓のNaKの排出増加

(4)心拍出量と内臓の血流量の増加  (5)脂肪細胞における脂肪分解の促進

 

B ホルモン分泌の調節

ホルモンの作用のしくみ

ホルモンが多様な働きを示す場合がある。例えば,チロキシンは代謝を促し,腸管におけるグルコース吸収を促し(ほ乳類),鱗へのグアニン沈着を促し(魚類),変態を促す(両生類)。一種のホルモンの多様な効果をどう説明すればよいか。このような疑問に対し,放射性標識ホルモンを用いた研究から,ホルモンは特定の標的細胞や組織に選択的に集積されることがわかった。一般にあるホルモンに対し,最も強く反応する組織は,そのホルモンを最も多くとりこみ,最も長く保留する。

 現在におけるホルモンの作用のしくみの話題はサザーランドの説である。彼の説は1960年頃にはじまっているが,日本で話題となったのはノーベル賞受賞(1971)によってである。この学説のもとになったのはサイクリックAMPの発見である。この研究はアドレナリンとグルカゴンがどのようにして肝臓におけるグリコーゲンからグルコースの生成を促進するかを知ろうとしたことに始まる。まずホルモンの受容体が細胞の表面にあって,膜にある酵素(アデニル酸シクラーゼ)を活性化し,これによってATPからサイクリックAMP(cAMP)をつくる。そしてcAMPがグリコーゲンを分解するグリコーゲンフォスフォリラーゼの活性化をもたらす結果,グルコースの生成が促進される。

 この働きは上記の2つのホルモン以外に,ACTHLHTSHMSH,副甲状腺ホルモン,後葉ホルモンなども同じようにcAMPの増加を起こさせることによってその作用を現すことがわかった。一方,インスリンはcAMPを減少させるように働く。このようにペプチド系のホルモンはほとんどの例においてcAMPを介してホルモン作用を現すことがわかったので,サザーランドはホルモンを第1メッセンジャー,cAMPを第2メッセンジャーとよんだ。

 ここでサザーランドが第2メッセンジャーとよんだ考え方に重要な意味をもつと考えられる。それは,この表現がある意味ではベイリス,スターリングらがセクレチンの働きとして用いたケミカルメッセンジャーということばを,60年ぶりに復活させたことである。しかもSecond messengersと複数で示されていることに注意したい。つまりこれはcAMPという特定の物質をさすのではなく,情報物質としての一般化の意図が含められている。つまり,ホルモンが生体活性物質としてではなく,情報物質として見直され始めた1つのステップをつくったといえる。

 

フィードバック系(feed-back system)

簡単な自動調節装置として,定温器を考えてみる。これは,ヒーター・温度計・リレーからできている。定温器内の温度が上下すると,温度計とリレーがしかけ点からの温度のずれ(情報)をキャッチしてヒーターに指令を与える。この場合,器内の温度はヒーターの活動に支配されるが,同時にそれはヒーターの作動を支配する。このように,一方が他方の原因でもあり結果でもあるような関係のなりたつ系をフィードバック系という。

 ウィーナーによれば,「機械をその予定の行動によってではなく,実際の行動に基づいて制御する」ことがフィードバック機構であるという。上の例でいえば,予定の行動とは,しかけた温度のことであり,実際の行動とはしかけた温度からのずれである。

 こうした意味の自動調節のしくみは,生体内に数多くみられる。たとえば,恒温動物は外界温度の変化をキャッチして,これに対応する機構を働かせて,ただちに体温を一定値にもどす。血糖の調節や血液中の水分・塩分・ホルモン量についても,同様な方法で動的なバランスが保たれている。

 フィードバック系には,プラスのそれとマイナスのそれとがある。生体内の実例でいえば,前葉―甲状腺の働きあいは,マイナスのフィードバックである。つまり,甲状腺刺激ホルモンが多量に出れば多量の甲状腺ホルモンが分泌され,このホルモンは,前葉に対しては抑制的に働く。したがって,両ホルモンの分泌量はほぼ一定に保たれる。

 プラスのフィードバック機構はバランスを保つというよりは,ある働きを最大限に発揮させることに関係している。たとえば,解糖系で2分子のATPが消費されて,4分子のATPが新生する。その一部がフィードバックされ,解糖系に加わる。このようにして,そこでの機構の許される最大限のATPの生産が行われることになる。

 

甲状腺とチロキシン

ヒトの甲状腺(thyroid)は約25gの重さがあり,約10mgのヨウ素を含んでいる。ここから分泌される甲状腺ホルモンは,体の成長,成熟および正常な生理機能の維持に必要で,各種の代謝,特に異化作用の促進に影響をもっている。

 甲状腺の構成は大小のろ胞で,ろ胞は腺細胞からできたふくろで,ふくろの中(内腔)にはコロイドが含まれている。腺細胞の分泌物(ホルモン)はろ胞内腔に蓄えられる。これは他の内分泌腺に見られない特徴である。必要に応じて再び腺細胞に吸収されたホルモン(チロキシン)は毛細血管に放出される。

 甲状腺の活動は,脳下垂体前葉からの甲状腺刺激ホルモンによって刺激されるが,その甲状腺ホルモンは逆に,甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑制する(マイナスのフィードバック)。地下水中にヨウ素分が少なく,海からの食塩をとることの少ない地方は,ヨウ素の摂取量が少なくなる。そのため,チロキシンの分泌が不足し,脳下垂体前葉に対する抑制力が減るので大量の甲状腺刺激ホルモンが分泌される。その結果,甲状腺が異常に肥大(機能は低下)した患者がみられることになる。

 甲状腺ホルモンが代謝に及ぼすはたらきには次のものがある。

1糖の代謝の促進;グリコーゲンの分解を増し,組織でのグルコースの利用を促進し,また腸管からのグルコースの吸収を促進

2タンパク質合成の促進

3酸素消費増加,酸化的リン酸化促進

 チロキシンはサイロキシンともいう。物質名はテトラヨードチロニンで,ヨウ素を含む一種のα‐アミノ酸である。腺細胞から分泌されたチロキシンは血液中で大部分が血しょうタンパク質と結合して存在し,わずかに解離している遊離チロキシンが末梢組織に働くと考えられている。

オタマジャクシの変態*を促進するものとしてチロキシンは知られているが,これには他のホルモンも関与する。副じん皮質ホルモンも分泌が盛んになりチロキシンの作用を強める。また,脳下垂体からのプロラクチン(哺乳類では黄体刺激ホルモン)も関与し,これは変態抑制として働く。したがって,チロキシンとプロラクチンが拮抗し,これに副じん皮質ホルモンが関与すると考えられるが,まだ詳細な研究は進んでいない。

 

ホルモン分泌の異常と病気

下垂体性小人症 小児期の脳下垂体障害か視床下部の成長ホルモン分泌細胞の障害による。ヒトの成長は三期に大別され,乳幼児期の成長には甲状腺ホルモン,インスリンなどが必須である。次の学童期の成長には成長ホルモンが必要であり,思春期以後は男性では雄性ホルモン,女性では雌性ホルモンにより成長が促される。

 成長ホルモンのみの欠乏の場合は身長が低い以外は正常な大人となる。人種的に小人の場合,例えば,ピグミー族は成長ホルモンは普通に分泌されているが成長ホルモンの標的器官の1つである肝臓,骨組織に成長ホルモンの受容体が欠損しているため,身長が低いとされている。

 20歳前後で身長の伸びが止まるのは,雌性ホルモンや雄性ホルモンが多量分泌されて骨端線が閉鎖するからである。思春期以前に性ホルモンが多量分泌されると,骨端線が早期に閉鎖して身長は短くなる。

巨人症・末端肥大症 下垂体の成長ホルモン分泌が骨端線閉鎖前に多量に分泌し始めると巨人症になる。閉鎖後,すなわち成人してから発病すると身長の伸びが不可能なので末端部の肥大を起こし,あご・ひたいが出て末端肥大症となる。

 成長ホルモンはインスリンと拮抗性があるので,成長ホルモンの分泌を促す方法として,インスリンを与えて血糖を低下させたり,大量のタンパク質(アルギニンなどのアミノ酸でもよい)を経口的にとる等が考えられる。

尿崩症 多尿(10リットル以上/),のどのかわき,多飲等が症状で,視床下部の抗利尿ホルモン(バソプレシン)の産生障害で起こる(下垂体後葉はこのホルモンの貯蔵場所と考えられている)。抗利尿ホルモンの主作用はじん臓の集合管上の細胞に作用し,尿中の水の再吸収を促進させる。このとき,ホルモンが標的細胞の受容体と結合し,細胞内のcAMPを増加させ,膜透過性の変化によりホルモン作用を現すとされている。細胞の受容体が遺伝的に欠けているのはじん性尿崩症といわれ,多飲が乳児期から始まる。ウォーターベビーと称される。

甲状腺機能低下症 生まれつきの甲状腺ホルモン欠乏によって起こる小人症は特にクレチン病といわれ,治療しないと小人症のみならず知能が著しく低下する。症状は,疲れやすく,ねむたがり,夏でも寒がり,脱毛,皮膚の乾燥,顔は浮腫状となる。クレチン病の場合は生後6か月までに治療を要する。

バセドー病 甲状腺機能亢進症,2040歳,女性に多い。眼球突出・甲状腺肥大を伴う。多くはやせて汗かき,心悸()亢進,精神的不安定となる。

アジソン病 副じん皮質機能低下症で初期は全身倦怠感,易疲労感,体重減少,悪心,下痢等の症状がみられる。特徴的なのは皮膚の色素沈着で,血中の副じん皮質ホルモン減少のためフィードバックが作動し下垂体からACTHMSH(メラニン産生細胞を刺激するホルモン)が多量に分泌するため皮膚の色が黒くなる。

 

C 自律神経による調節

◆自律神経系

呼吸・循環・消化など,植物性機能に関係している神経を自律神経系という。自律神経系は,大脳皮質の直接的支配を受けずに独自の働きをしている。自律神経が支配するものは,毛髪の根・血管壁・気管支・胃腸のように管状や袋状の内臓の壁と,だ腺・すい臓・肝臓などの腺構造の器官である。これらの器官は,反射的(無意識的)に調整されている。自律神経は遠心性神経で,脳および脊髄の胸部・腰部・仙部などから出ている。これらの神経突起は,脳・脊髄を出てから,途中で必ずニューロンをとりかえて目的の臓器にいく。

 自律神経には,拮抗的に作用する2つの神経系,すなわち交感神経(sympatheticnerve)と副交感神経(parasympathetic nerve)がある。交感神経は脊髄の胸腰部から出て,脊髄の両側にじゅず状に連なっている神経節を経て各臓器に分布している。他方,副交感神経は,脳から出ている動眼神経・顔面神経・舌咽(ぜついん)神経・迷走神経の中に含まれており,それと脊髄の仙部から出ている仙髄神経からなっており,交感神経と違って神経節は内臓に接近して存在するか,または内臓内にある。

 

D 血糖量の調節(自律神経とホルモンの共同作用)

血糖量の調節

ヒトの血液の中には,通常100cm3について約0.1gのグルコースが含まれている。すなわち,だいたい0.1%含まれる(これを血液学では100mg%と表す)。食事後には,血液中にグルコースが増加し,一時は過血糖の状態になる。しかし,しばらくの間に正常の値にもどされる。ところが,常にその増加が多すぎて180mg%をこえる状態になると,糖が尿に出て血糖が減ってくる。この180mg%の境界はかなり厳密で,これを限界値という。すなわち180mg%に達しないうちでは,ふえても糖は尿に出てこない。そして,肝臓や筋肉などにグリコーゲンとしてはいるほか,グルコースの形のまま,皮膚や皮下組織にはいって,結局血糖はだいたい100mg%に保たれることになる。このように血糖が調節されるのは,肝臓の機能によるとともにホルモンが関係している。すなわち,ある程度の調節は,肝臓の機能にもよるが,さらに大きな調節は,ホルモンの作用によっている。

 血糖がグリコーゲンに合成されて,肝臓や筋肉にたくわえられるのは,インスリンの作用による。したがって,インスリンの分泌が不十分であると,血糖は増加したままになり,腎臓の細尿管の再吸収の能力をオーバーするので,尿にたえず出される。これがすなわち糖尿病である。

 また,運動をして筋肉を使うと,血糖が筋肉にとり入れられて減ってくる。このとき,肝臓などにたくわえられたグリコーゲンは,糖に分解されて血液中に出てくる。これは,副腎髄質からのアドレナリンの作用による。血糖が減ってくると,視床下部にある糖中枢が興奮し,交感神経を経て副腎髄質に刺激が伝えられ,アドレナリンが血液中に出るためである。

 血糖が減りすぎてもからだに異常が起こる。70mg%ぐらいまで下がると,空腹感・無力感・疲労感がまず起こり,さらに進むと脈が速くなったり,冷汗,瞳孔の拡大,けいれんなどが起こり,さらに45mg%になるとこん睡状態に陥る。しかし,特別の病気でなければ,このような低血糖は起こらないし,激しい運動を続けても,70mg%以下に下がることはない。

 要するに,組織の活動に対する適切な血糖量の限界が決まっていて,それはだいたい70180mg%であり,これが保たれるのは,種々の器官の活動によるのであり,糖尿も血糖の恒常性を保つ働きの現れといえる。

 

インスリンとグルカゴン

インスリン すい臓のランゲルハンス島にはA(α)B(β)の両細胞がある。アロキサンを与えるとB細胞が壊れ,インスリンの分泌が止まるので,インスリンはB細胞から分泌されることがわかった。インスリンは分子量約600051個のアミノ酸(A21B30)からなるポリペプチドである。インスリンは次のようにして血糖を減らす。

 a 筋細胞におけるグルコースのとりこみを増す。細胞内に入ったグルコースはグルコース-6-リン酸になり,これは細胞外には出られない。

 b 肝臓細胞でのグリコーゲン合成酵素の活性化。

c 細胞での糖の酸化促進。

グルカゴン グルカゴンはすい臓のランゲルハンス島のA細胞から分泌されるペプチドホルモンで,29個のアミノ酸からなり,分子量は約3500である。グルカゴンの主な作用は,肝臓のグリコーゲンを分解して血液中に放出し,血糖値を上昇させることである。また,タンパク質の分解および脂肪の分解も促進する働きをもっている。さらに,糖の新生も盛んにする。正常な状態では,グルカゴンの分泌と血糖濃度との間には逆関係があって,過血糖でグルカゴンの分泌が抑制され低血糖で分泌が増加する。

 上図は,炭水化物の多い食事をしたときのグルカゴン分泌の抑制とインスリンの分泌増加を示している。タンパク質を食べると,グルカゴンの分泌は増大する。これは,タンパク質によってインスリンの分泌が促されるから,低血糖になるおそれがあるが,同時にグルカゴンが分泌してこれを防いでいる。また,グルカゴンは,脂肪組織に働いて,脂肪分解を促す作用がある。

 このように,インスリンとグルカゴンは同じすい臓のランゲルハンス島にある細胞から分泌されながら相反する作用をもっていて,互いに協同して血糖濃度を調節し,あるいは脂肪の交代に関与して,全身の細胞へのエネルギー補給にあずかっている。

 

心臓も腎臓も内分泌器官である(体液量のホメオスタシス)

★心臓

心臓は血液を送るポンプであるが,ホルモンを分泌する内分泌器官としての機能ももっている。分泌されるホルモンはアミノ酸28個からなる「心房性ナトリウム利尿ペプチド」(ANP)である。

血液の量は一定に保たれているが,このホメオスタシスに働いているのがANPである。全体の血液量が増えたとしよう。すると心房に入ってくる血液量も増えるため,心房は膨らんで壁の細胞(心房細胞)は余計に引っ張られることになる。心房細胞(つまり筋細胞)は引っ張られるとANPを血中に分泌する。ANPは腎臓の糸球体でのろ過量を増加させ,尿量を増やす(だから利尿ペプチドなのである)。すると血液量が減って一定の水準に保たれることになる。

体液量のホメオスタシスには,水の量とイオンの量の制御が関わっており,この制御に働いている二つの内分泌系がある。すなわちANPは体液を減らす方に,レニン‐アンギオテンシン系は増やす方に働く。

ANPは以下の4つの機能をもつ。

1.腎臓からのナトリウムイオンと水の排出を促進する。(血中のナトリウム濃度が下がると,血中からまわりの組織液に水がとられるため,血液量が減る)

2.レニンの放出を抑制し,アルドステロンや抗利尿ホルモン(ADH,バソプレシン)の分泌を抑制する。(アルドステロンや抗利尿ホルモンは水の保持に働くホルモンである)

3.渇きの感覚をおさえる。

4.末梢血管に対するアンギオテンシンIIやノルアドレナリンの効果を抑えるため,ANPは末梢血管を拡張させる。そのため血圧が低下する。

 

★腎臓

腎臓は血液をろ過して不要なものを排出するフィルターであるが,エリスロポエチンを分泌する内分泌器官でもある。このホルモンは赤血球の産生を促進する作用をもつ。腎臓の細尿管周囲の毛細血管の内皮細胞から分泌され,分子量は約34,000165個のアミノ酸からなる糖タンパク質である。これは骨髄で幹細胞の分化を促進し,赤芽球にする。赤芽球は網赤血球となって循環系に入り,赤血球となるため赤血球量が増える。エリスロポエチンの分泌は組織の酸素分圧の低下によりうながされる。

腎臓はレニンも血中へ分泌する。レニンは血漿中のアンギオテンシノーゲンに働き,それを分解する酵素である。このように,レニンの標的は血漿中のタンパク質であり細胞ではないため,厳密な意味ではレニンはホルモンではない。しかしレニン‐アンギオテンシン系という内分泌制御系の重要なメンバーであるので,ホルモンとして扱われることも多い。レニンはこの系を通して血液量を増やす。つまりANPと逆の効果をもたらすものである。血液量が減少して腎臓で血流量が減るとレニンが分泌される。

レニンは血中のアンギオテンシノーゲンを切断してアンギオテンシンIにする。アンギオテンシンIは肺などの毛細血管内皮にある酵素によって再度切断されてアンギオテンシンIIとなる。アンギオテンシンIIは以下の4つの働きをもつ。

1.副腎皮質からアルドステロンというホルモンを分泌させる。アルドステロンは遠位尿細管でのナトリウムの再吸収を促進させる。

2.脳下垂体後葉から抗利尿ホルモンの分泌を促進させる。抗利尿ホルモンは腎臓での水の再吸収を高める。

3.渇きの感覚を刺激する。

4.末梢血管を収縮させ,血圧を上げる。

 

糖尿病とその検査法

糖尿病 グルコースが尿に現れるほか,インスリンの不足によって高血糖になる。糖を与えてもインスリンの追加分泌がないので,糖の利用ができなく,高血糖でありながら組織としては糖不足の状態になっていると考えられる。組織内の糖不足をおぎなうため,脂肪組織の中性脂肪がどんどん分解して遊離脂肪酸として血中に現れる。これはインスリンの助けをかりずに代用的エネルギー源として筋肉組織などに利用される。また,肝臓では,この遊離脂肪酸を利用してエネルギー生産に使うほか,これを糖に転化して血中に補給するので,ますます高血糖になる。また,肝臓での脂肪酸分解に伴うケトン体がアセトンを始めとして酸性物質として生産され血中に現れる。これが尿中に入るので,糖尿の人の尿は甘ずっぱいリンゴのくさった様な独特の香りがする。高血糖のため動脈硬化・糖尿性昏睡・渇き・易疲労感・多尿・多飲・神経痛等々の症状が出る。やせ型糖尿病はインスリンによる治療,肥満型糖尿病は食餌療法を主体とした治療が行われる。

検査法 糖尿病であるかどうかを診断する助けとなるための検査としては (1)尿糖検査 (2)血糖検査 (3)その他すい臓内分泌機能の検査がある。糖尿病が疑われるときには,まず尿糖検査をするのがよく知られている。

 尿糖の検査は糖質を多く食べた後,12時間後の尿で実施することが大切である。血液中のグルコースはじん臓の糸球体でほとんどろ過されるが,細尿細管で再吸収される。この再吸収能を上回って糖がろ過されると尿の中に糖が出ることになる。軽い糖尿病患者の場合,空腹時の血糖値が高くないときには尿中に糖が出ない。したがって,尿糖の検査は必ず食後に実施する。

 尿糖の検査には還元反応(ニーランデル反応)を応用した方法と,酵素反応を利用した試験紙(テステープ,ダイアステックス,コンビステックス等)を用いる方法の2通りがあるが,現在は後者が大部分である。

 試験紙にはグルコースのみに特異的に反応する酵素がしみ込ませてある。尿中のグルコースがこのグルコース酸化酵素の作用を受け,生じた過酸化水素が,これも試験紙中の過酸化水素分解酵素の作用を受けて酸素を放出する。この酸素が試験紙のオルトトリジンを酸化して呈色する。尿を浸して正確に1分後の色調の変化で判定する。グルコースが多いほど(したがってOが多いほど)色が黄緑色から青緑色に変化する。

 

 

 

 








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