トップ生物I 改訂版第2部 生命の連続性第2章 発生>第1節 発生の過程

第1節 発生の過程

 

A 卵と卵割

◆卵割

受精卵の分裂は本質的には体細胞分裂であるが,細胞の肥大を伴わない分裂,即ち娘細胞(この場合,割球という)は次第に小さくなる特殊な細胞分裂であるので卵割というよび方をする。

1.卵の種類と卵割形式 卵割は卵黄の量と分布に影響される。卵黄は,タンパク質・脂肪・無機質などを主成分とする粒状物質で,これが多量に集まる所では,細胞質分裂が妨げられる。等割・不等割・表割・盤割などの違いは,こうして生じる。

2卵割の意義 卵割が細胞の大きさの減少と多細胞集団の形成ということのほかに次の意味がある。それは,卵割によって細胞質が分割されるのだが,その細胞質に分極が存在している場合には,それがそのまま割球に割りあてられる。つまり,受精卵の細胞質物質の分布が割球細胞質の配列分布となる。この割球による細胞質の差が,卵割に引き続いて起こる陥入や誘導現象の重要な布石となる。

 

◆胞胚の形成

卵として産み落とされる動物は,受精後しばらくは無防備で危険な時期である。したがって,まずは細胞を急速に増やし,発生を早く進行させて移動や摂食できるような状態になる必要がある。卵割期の卵割(細胞分裂)の速度は極めて速く,体細胞に比べ数十倍の速度でDNA複製をしており,細胞周期が極端に短くなっている。DNA複製が特に活発な卵割期の初期には細胞周期のG1がなく,細胞がDNA複製に専心している様子がうかがえる。ほ乳類のように母親の体内で外界から守られて発生する生物の卵割速度は遅い。

卵割の後期を迎えた胚は,やがて最も外側の細胞がすきまなく結合しあうようになり,中空の球のような構造をとる。胚の表面を覆う細胞の壁を胞胚壁,腔所を胞胚腔という。この過程を胞胚化といい,発生途上の重要な基本構造である。多細胞体の基本体制の観点からみると,壁の薄い細胞層で腔所を包み込んだ構造は二つの利点を備えている。多細胞体が単なる細胞群の塊であったならば,内部への酸素および栄養の供給と,内部からの老廃物の排泄が滞ると考えられる。多細胞動物は胞胚化することによりこの問題を解決しているのである。第二に,外界から隔離された胚の構造を獲得することによって,外部環境とは比較にならない安定した内部環境を獲得できる。

胞胚期に至るまで初期胚の細胞は形態的な違いがほとんど見られないが,卵割によって分配された細胞質のタンパク質やmRNAなどの母性因子の影響を受け,胚の前後軸や背腹軸に沿った遺伝子の発現調節が始まっている。

 

B 胚葉の分化

◆陥入と原口の位置

胞胚から原腸胚が形成されるとき,陥入が起こる。この陥入によって外胚葉と内胚葉ができる。陥入のしかたには3つの型がある。ウニやナメクジウオのように,卵黄が少ない卵では,植物極側の細胞の分裂が盛んになるために陥入が起こる。これに反して,クシクラゲや環形動物・軟体動物では,植物極側の細胞に卵黄が多量に含まれているから,ここでは分裂があまり行われない。したがって,動物極側から伸びてきた細胞層が,植物極側の部分を外から包むような形になって陥入が起こる。両生類などでは,両者の形式を組み合わせたもので,そのような形式の陥入のしかたがもっとも多く見られる。

 陥入の入口にあたる部分を原口という。文字からみれば,口の起源であるが,原口から必ずしも口ができるとは限らない。

 動物の系統樹(生物で扱う)を見てみると,途中から幹が大きく2つに分かれる。左側の枝は旧口動物(原口動物),右側の枝は新口動物(後口動物)である。ウニ(きょく皮動物)やカエル(両生類)は新口動物であり,原口は肛門となり,陥入の一番奥のほうに口が開口する。それに対して旧口動物では,原口は文字通り口となり,肛門は反対側にできる。

 

◆ウニの発生

@ 桑実胚には,外側に受精膜があるが,胞胚期になると,胚は受精膜をとかして海水中にふ化し,繊毛をもって遊泳するようになる。ウニの胞胚は,1層の細胞でできている。多層のカエルの場合との違いに留意させる。

A 原腸胚期には,カエルと同様に陥入が生じるが,カエルでは赤道のやや植物極側から起こるのに対し,等割をするウニの卵では真下(植物極)から陥入する点に注目させる。

B 原腸胚は,内外2重の細胞層からなり,内側を内胚葉,外側を外胚葉とよぶ。その間に中胚葉が次のようにできる。まず,陥入の途中に植物極側の細胞の一部が遊離して卵割腔に落ちこみ,一次間充織となる。その後,陥入した原腸の奥の細胞も遊離して,二次間充織となる。これらが将来分化して中胚葉となる。

C 胚はやがてプルテウス幼生となる。胚と幼生とは,餌を自分でとれるかどうかで区別される。幼生はやがて変態して,成体となる。

 

◆カエルの発生

@ 2細胞から4細胞期になるときの分裂,つまり,2回目の細胞質分裂は,どちらの方向に起こるかに留意させる。3回目の分裂とどちらが先に起こるかについて,誤解している生徒も少なくない。

A カエルの胞胚は,ウニと違って多層で,動物極側で23層,植物極側で78層の細胞からなる。

B 胞胚のごく初期の胚を桑実胚というが,時期の名称としては桑実胚期とよばれる。なお,2細胞期,4細胞期,……のものは,2細胞胚,4細胞胚,……といった用語は一般に用いられず,桑実胚期になってから胚という言葉が用いられるようである。胞胚・原腸胚を時期の名称でいうときは,胞胚期・原腸胚期という。

C 卵の赤道よりやや植物極側によった部分から陥入が起こり,原腸胚となる。外胚葉・内胚葉の区別ができ,さらに原腸に裏打ちされた背壁に中胚葉が分化する。これらの用語とともに,原腸・原口についてもきちんと理解させておく。

D 原腸胚の次は,外胚葉の部分が内部に落ちこみ,神経管を形成する神経胚の時期となる。

E 神経胚の初期には,神経板ができ,その両側のひだ(神経褶)がしだいに盛り上がり,両側より神経溝を中にして接近する。やがてこれが接してつながり,神経管を遊離する。神経管は後に脳・脊髄の中枢神経になる。

F 神経管の形成と平行して,原腸胚の中胚葉から,管状の脊索が遊離する。脊索はやがて体節と側板に分離する。原索動物のなかには,脊索が終生残って中軸支持器官として働くものがあるが,脊つい動物では胚期および幼生期に中軸支持器官としての役目を果たすだけで,軟骨性または骨性のつい骨におきかわり,脊柱内に痕跡的に存在するのみである。

G それに次いで,原腸胚の原腸を左右からとり囲むように内胚葉が盛り上がり,脊索の下側で接着して腸管ができる。腸管は,後に消化管をつくる。

H 神経管などが完成する時期から,胚は前後に伸長し始め,体の後端に尾が形成されて尾芽胚となる。さらに発生が進んで,おたまじゃくし(幼生)となり,変態して成体となる。

 

◆陥入と原口の位置

胞胚から原腸胚が形成されるとき,陥入が起こる。この陥入によって外胚葉と内胚葉ができる。陥入のしかたには3つの型がある。ウニやナメクジウオのように,卵黄が少ない卵では,植物極側の細胞の分裂が盛んになるために陥入が起こる。これに反して,クシクラゲや環形動物・軟体動物では,植物極側の細胞に卵黄が多量に含まれているから,ここでは分裂があまり行われない。したがって,動物極側から伸びてきた細胞層が,植物極側の部分を外から包むような形になって陥入が起こる。両生類などでは,両者の形式を組み合わせたもので,そのような形式の陥入のしかたがもっとも多く見られる。

 陥入の入口にあたる部分を原口という。文字からみれば,口の起源であるが,原口から必ずしも口ができるとは限らない。

 動物の系統樹(生物で扱う)を見てみると,途中から幹が大きく2つに分かれる。左側の枝は旧口動物(原口動物),右側の枝は新口動物(後口動物)である。ウニ(きょく皮動物)やカエル(両生類)は新口動物であり,原口は肛門となり,陥入の一番奥のほうに口が開口する。それに対して旧口動物では,原口は文字通り口となり,肛門は反対側にできる。

 

◆胚膜

教科書では取り上げられていないが,は虫類,鳥類のように陸上に産卵する動物や,胎生のほ乳類では,胚を乾燥などから守るための胚膜が発達している。胚膜は3つの胚葉が伸びて形成されたもので,卵黄嚢・尿嚢・しょう膜・羊膜からなる。卵黄嚢は卵黄を包み,胚の栄養に関係する。また,しょう膜と羊膜とは,ともに胚の保護にあたる。尿嚢は胚の消化管腹壁が膨出したもので,その中に胚の排出する尿をためるほかに,表面に血管が分布していて,胚のガス交換を行うようになっている。

羊水 羊膜液ともいう。羊膜上皮の分泌物で母児両体の血管からの浸出液が混じっている。羊水は,胚の発育環境としてはなくてはならない水圏の役割を果たしており,このため,胚は種々の点で保護され,陸上での発生が可能となった。

尿嚢(尿膜)  脊つい動物の羊膜類における胚膜の1つで,胚体の後腹方の内臓葉(内胚葉+内臓中胚葉)の膨出として生じる。速やかに拡大して,しょう膜と羊膜の間の胚体外体腔中に拡がり,うすい壁をもったふくろとして尿嚢を形成し,細い柄によって胚体の消化管と連続する。はじめ排出器官として機能するが,その後,鳥類やは虫類では,しょう膜と合して卵殻の下に拡がり,血管網を発達させ呼吸器官としてはたらく。ほ乳類では尿嚢の血管は絨毛膜(柔毛膜)の絨毛(柔毛)の中心に入り,胎盤の形成にあずかる。

 

C 器官の形成

◆各胚葉と器官形成

教科書では,脊つい動物を例にして,各胚葉がどのような器官に分化していくかを概略的に示している。ただし,器官はいくつかの組織の集合体であるから,ある器官全体の起源が単一の胚葉というわけにはいかない。たとえば,ヒトの皮膚は表皮・真皮などからなるが,表皮は外胚葉性,真皮は中胚葉性の組織である。したがって,この表にあげられた器官は,その主要な部分が示された胚葉から分化してきたことを表していると解釈するべきである。

 

参考 ヒトの発生

ヒトを含むほ乳類は,輸卵管が特殊化した子宮に胚を保持する。また,卵黄を蓄えることをせずに,母親の胎盤を介した血液循環により,発生の素材とエネルギー源が供給される。

 ほ乳類の卵は,ファロピウス管とよばれる輸卵管の上部で受精する。第一卵割は受精から24時間後に起こる。ウニでは約1000細胞,カエルでは数千細胞に達しているころである。続く卵割も1回当たり約12時間もかかる。胚は子宮に向けて輸卵管の中をゆっくりと運ばれる。8細胞期になると,隣接する細胞間に密着結合が形成され,細胞の結合が緊密になる。この変化をコンパクションという。第4卵割では,一部の細胞の分裂面が胚の表面と平行になるので,34個の内部細胞が生じる。これらは後に内部細胞塊となり,胚の本体と羊膜を形成する。外側の細胞は栄養芽層を構成し,後に胎盤になる。

 初期胚の割球は,胚から取り出して色素などで標識し,移植することにより,その割球がどの組織のどのタイプの細胞になるか調べることができる。8細胞期の細胞は,すべて胚組織にも胎盤にもなることができるが,第4卵割を過ぎると,8個の内部細胞塊の細胞は胚組織を形成するが,8個の外部細胞層をつくる細胞は胎盤にしかならない。この運命決定の仕組みは,明らかにされていないが,卵に蓄えられた母性mRNAやタンパク質でもなく,重力でも,精子の進入点でもないと考えられている。

 栄養芽層細胞の胞胚腔に面した細胞膜にはナトリウムポンプがあり,Na+を積極的に胞胚腔内に運搬している。栄養芽層細胞は密着結合によって緊密につながれているので,Na+は細胞間隙から抜け出すことができない。Na+が蓄積されると,浸透圧が上昇し,水が内部に進入して胞胚腔が拡張する。この段階の胚を胚盤胞といい,子宮壁に着床できる状態になっている。細胞数は約100個であり,内部細胞塊は胚盤胞の内部に偏って存在する。ヒトでは受精から胚が子宮に到達するまでに1週間ほどかかる。

内部細胞塊と接する栄養芽層が子宮粘液分泌細胞に接着し着床すると,栄養芽層の細胞が増殖し,分化して胎盤が形成される。内部細胞塊では,胚盤葉上層を覆うように1層の細胞層が生じ,これが後の羊膜になる。胚盤葉上層の細胞は分裂を続け,原条を形成する。なお,原条は両生類の原口に相当し,原条の先端には形成体のはたらきをもつ結節が生じる。


 

◆興味ある話  くちびるや肛門は何胚葉性だろうか?

 口と肛門はどちらも消化管が体外へ開く場所だから,非常に微妙な所である。つまり,外胚葉性の上皮と,内胚葉性の消化器内面をおおう上皮が,この口と肛門の所で相接する訳だから,ちょうどその接点であり,どちらともいえるし,どちらともいえない。と思うだろうが,実は,口は相当奥まで(舌のつけ根と鼻の奥)外胚葉性のものである。だから,口腔内粘膜は,まあ,ほとんど外胚葉性と思ってさしつかえない。

 ところで,肛門はどうだろうか! これは,常識的に答えられる。肛門部の皮膚は,かなり内側まで入り込んでいるのである。ウソだと思ったらイヌの肛門を脱糞時に良く観察するのがよい。実にうまくできていて,便をうまくチョン切っているだろう。つまり,肛門は完全に外胚葉性ということがいえる。

 

 

 

 








本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2009-2012 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved.