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第2節 刺激の受容

 

感覚受容細胞

受容器は,感覚受容細胞と付属器官によって構成されている。感覚受容細胞は,

外界のさまざまな刺激を膜電位の変化という電気的エネルギーに変換するもので

ある。感覚受容細胞によるエネルギーの変換過程には,次の4ステップがある。

@第1のステップ:刺激のエネルギーが受容体タンパク質分子の構造変化を引き

おこした後,直接的に,または,細胞内のセカンドメッセンジャー系を介して

間接的に,膜のイオン透過性を制御しているチャンネルタンパク質に作用する。

A第2のステップ:チャンネルタンパク質の構造変化の結果,膜のイオン透過性

が変化して膜電位が変化する(通常,脱分極方向)。この膜電位変化を受容器電

位という。

B第3のステップ:受容器電位が受容細胞膜のケーブル特性にしたがって,電気

緊張性に広がる。

C第4のステップ:電気緊張性に広がってきた脱分極性の受容器電位により,イ

ンパルスが発生する(シナプス部位で伝達物質が放出される場合もある)

 第1のステップで,エネルギー変換される刺激の種類は受容細胞の種類により

異なっている。各受容細胞に有効な刺激を適刺激という。受容細胞を適刺激の種

類によって分類すると,光受容細胞,機械受容細胞,温度受容細胞,化学

受容細胞の4グループに分けられる。

 

A 視覚

視細胞の働き

視細胞のうち,錐体細胞は黄斑(黄点)を中心にして分布し,網膜の外縁に向か

って少なくなり,逆に外縁部にはかん体細胞が多い。物体を注視するときは光が

黄斑に入り,ここは錐体細胞の密度が最大(かん体細胞はない)なので視力が大き

い。暗所では(錐体細胞が働かないので)注視するとかえって見えなくなる。光度

の低い星をよく見ようとすると見えにくく,夜道では少し前方を見るほうがつま

ずかないことが説明できる。

 かん体細胞の外節の袋には視紅(ロドプシン)という色素タンパク質が含まれて

いる。この赤い色素(シス型レチナール)は光を受けると変色し,レチネン(トラン

ス型レチナール)とタンパク質に分離する。このとき外節の小胞からCa2が放出

さ れ視細胞が興奮する。

 暗順応――レチネン(トランス型レチナール)から視紅への合成は暗所で促進。

      暗所では視紅の合成が進み,感光性が増す。

 明順応――明所では視紅が減少し,かん体細胞の感光性が減っている。(しかし

      錐体細胞が働いているのでそれに気づかない)

明所から暗所に入った場合,最初はよく見えないのに,しだいによく見えてく

る。これはかん体細胞の感光性が減っている明所(錐体細胞が働いているのでそれ

に気づかない)から暗所に入ったのでよく見えない。しかし,しだいに視紅の合成

が促進されるので感光性が増してよく見えてくるのである。

 明所から暗所に入ったときの感光性の増加の状態を示したのが次の図である。

 

 曲線aで示される感光性の増加は瞳孔の拡大に伴う錐体細胞によるものであり,

b曲線で示されるのはかん体細胞中のロドプシンの増加による暗順応を示すもの

である。約30分後に平衡に達するゆっくりした変化である。ビタミンA不足に

よってロドプシン合成が不十分であるとb曲線による感光性の増加がみられず,

7000マイクロルクス以下ではよく見えないことになる(c曲線)。これが夜盲症で

あり夕暮れどきの暗順応能力低下を特徴とする(人工照明下では錐体細胞が働く

ので,この能力低下がめだたない)

 

実験1 観察 盲斑の位置と形

B 聴覚

耳小骨

中耳には,鼓膜に付着しているツチ骨,それにつながるキヌタ骨,およびアブ

ミ骨の3つの耳小骨が宙づりの状態で存在する。それぞれ,物をたたく道具のツ

チ,布をうちやわらげたり,つやを出すための木()の台のキヌタ,馬に乗る際

に足をかけるアブミから,その名がある。

 音を伝えるのは,主に鼓膜と耳小骨連鎖によるが,これにより,広い面積をも

つ鼓膜で受けた空気の振動を狭い面積のアブミ骨底板で卵円窓を通じて,うずま

き管のリンパ液に伝える。

 アブミ骨には,アブミ骨筋につながる腱がある。アブミ骨筋は人体で最も小さ

い筋で,顔面神経によって支配され,過大な音が入ってきたときに,反射により

収縮を起こし,アブミ骨を動きにくくして,音のエネルギーを減らす働きがある。

 ほ乳類には,中耳に耳小骨が3つあるが,は虫類では,アブミ骨だけしかない。

は虫類では,ツチ骨とアブミ骨は,あごの関節を作る骨となっている。ほ乳類の

耳小骨のツチ骨,キヌタ骨は,もともとあごの骨であったと考えられる。

 

音波の受容

中耳の3個の耳小骨はてこの働きによって音の振動を拡大し,うずまき管内の

リンパ液の振動に変える。うずまき管を引き伸ばして模式的に示すとA図のよう

になり,基底膜を中心にして上下2つの管になり,この管は先端の小孔で連絡し

ている。前庭窓を経て伝えられた振動によって,リンパ液内にうずまき管の先端

に向かう進行波を生じる(B)

 

 

ベケシー(1943)は,うずまき管基部の基底膜は,進行波により高低両音で振動

し,先端部には,低音を与えたときのみ進行波が達することを顕微鏡下で観察し

た。この観察は,田崎,デービス(1952)による電気的な記録によっても確認さ

れた(下図)。 基底膜が振動すると,その上のコルチ器官中の有毛細胞の毛が被

蓋膜にふれて“ずれ”を起こし,有毛細胞の細胞内電位に変化をもたらす。この

電位変化が神経細胞によって大脳に伝えられる。その間,中脳・間脳で情報の処

理・統合が行われているが,その詳細については十分明らかではない。

 

ミューラーの法則

目には光が,耳には音がそれぞれの感覚器に適した刺激(適刺激)であるが,そ

れ以外の刺激でも十分に強ければ感覚細胞を興奮させることができる。機械的刺

激が網膜や視神経に加わっても,生じる感覚は“視覚”である。この法則性をミ

ューラーの法則という。

 

参考 味覚と皮膚感覚

味覚

味には,塩辛味,酸味,苦味,甘味の4種類が知られており,体にとって,そ

れぞれ役割がある。毒物の多くは苦味をもち,また,腐敗物は酸を含む。このこ

とより,生体にとって有害なものをしりぞけるための一つの働きとなる。酸味は,

だ液分泌の反射や消化管の運動といった自律神経の反射,さらに,インスリン,

成長ホルモンなどの分泌に関する内分泌系の反射に関係すると考えられている。

塩辛味は,体に必要なミネラルを検出する味である。甘味は,エネルギーの源の

糖質を検出するものであるが,近年では,サッカリン,アスパルテームなどの人

工甘味料や,ステビア,モネリンなどの天然甘味料が知られている。この4種類

の他に,グルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウムなどで生じる旨(うま)

味を基本味に加えようという気運が日本の研究者を中心に高まっている。

 食塩,塩酸,キニーネ(苦味),砂糖の4種類の味刺激が多くの味神経にどの程

度反応したかを実験し,4種の味スペクトルを重ねあわせると次の図になる。

 ラットに砂糖水を飲ませた後,塩化リチウムを注射すると,ラットは砂糖水を

嫌うようになってしまう。ハムスターを用いて同様の実験(味覚嫌悪学習法)を行

うと,それぞれ,類似の味を持つ物質を嫌うことがわかる。ヒトの味の分類(4

類の基本味覚)とハムスターの味の分類とが同一であることがわかる。

 

 








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